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【ネタバレ】森谷“桜井日奈子”が人見“松田元太”の全肯定オタクに!『人事の人見』と考える理想の父親像

人事の人見』(フジテレビ系)第5話は、働くお父さんがテーマ。

ダブルインカムが主流となった今、育児は母親任せで、男は働く背中だけ見せていればいいという考えでは父親失格。大人になったとき、子どもから「お父さんは何もしてくれなかった」と言われないためにも、令和の父親はどうあるべきなのだろうか。

これぞ王道のシチュエーションコメディ!

本作のメイン脚本家である冨坂友が、三谷幸喜と彼の主宰する東京サンシャインボーイズに強い影響を受けた作家であることは、第1話のレビューでも紹介した通り。三谷といえば日本のシチュエーションコメディの大家。代表作の一つである『王様のレストラン』では潰れかけのフレンチレストラン、『総理と呼ばないで』では総理官邸という限定したシチュエーションを舞台に、傑作コメディを輩出してきた。

本作もほぼ日の出鉛筆の社内を舞台に展開してきたが、中でもこの第5話は「会社から一歩も出ない」「日替わりしない」という設定が効いて、一層シチュエーションコメディの色彩が濃いつくりになっていた。

そんな第5話の主人公は、須永(新納慎也)。須永は、別れた妻の綾子(智順)と娘の陽菜(小井圡菫玲)に見栄を張りたい一心で人事部長であると嘘をついていた。会社の内情など離れ離れで暮らす家族にはわからない。本来ならバレるはずのない嘘だった。ところが、社員の家族や地域の人々を対象としたファミリーデーに綾子と陽菜が来社。須永は、二人の前では自分を人事部長だということにしてほしいと人見(松田元太)らに頼み込む。

ささやかな嘘をつき通すために、周囲が茶番劇に巻き込まれるというのはコメディにおける鉄板中の鉄板。大阪人なら土曜の吉本新喜劇でたぶん5000回くらい見たやつ。なので、鮮度はまったくないのだけど、逆に骨格が頑丈な分、いつも以上に気楽に笑える回になっていたと思う。

こういうシチュエーションにおける妙は、ひとつの嘘を貫き通すために、さらに無理のある嘘をついて、どんどん話がおかしくなっていくところ。この回で言えば、本物の部長である平田(鈴木保奈美)と鉢合わせした人見らが、平田のことをダンスアンドボーカル部の部長であると強引にこじつけるところが真骨頂。ミュージカルをホームとする新納の歌唱力も相まって、ギリギリあり得そうなところがズルい。なんならちょっと踊ってほしいわ。

富樫(津和野諒)の息子から、部長の名前は平田だったはずと指摘され、「平田須永です」と苦しすぎる言い訳をぶっこむなど、須永の嘘はほとんど落ちかけの綱渡り状態。そこへ、平田が人事部長として来場客の前でスピーチをすることになり、もはや絶体絶命のピンチに。無理やり壇上に上がり込んだ須永が「人事部長の平田須永です」と自己紹介し、平田から「なんで漫才コンビみたいに言うのよ」とツッコまれるくだりは、それこそよくできた漫才のような気持ち良さがあった。

部長という肩書よりも大切なもの

さらに、今回の王道コメディ設定にブーストをかけていたのが、森谷(桜井日奈子)だ。第3話の一件以来、すっかり人見に夢中の森谷。須永が妻子の前では自分を部長ということにしてほしいと提案したときも、最初は反対していたくせに、人見が賛同した途端、爆速掌返しをかましていた。さすが掌返しはオタクの得意技。もはや森谷は人見の全肯定オタクにしか見えない。

「ダンスアンドボーカル部の平田部長と人事部の須永部長が一緒に歌って踊ってるっていう」と言いながら二人して小刻みに揺れてるのもシンメ感あって可愛いし、人見の「もう二大エースだからね」の返しもうまい。いつの間にかすっかり息が合っていて、いいコンビ感がある。

あと、心がざわつくと写経に励む陽菜ちゃん、小学生女子にしては悟りを開きすぎていて、もはや空海の生まれ変わりか何かだと思う。結局、陽菜が須永の会社に来たいと思ったのは、自分が父親から愛されていないと思っていたからだった。陽菜は、父親は自分より仕事のほうが大切なんだと思っていた。何を考えているかわからない父親のことが知りたくて、ファミリーデーにやってきたのだった。

子どもは決して父親が会社で出世することをいちばんに望んでいるわけじゃない。それよりもうれしいのは、自分をちゃんと見てくれていること。仕事のために家庭があるわけではない。家庭を守るために仕事がある。だからこそ、家族の大切なイベントのためなら、もっと日本の父親は仕事を休んだっていいし、それが評価でマイナスに響くことがあってはならない。というのが、今回の結論。どんな立派な肩書きも、親という唯一無二の肩書きに代わることはできないのだ。

一方、社長の小笠原(小野武彦)の悪口をネット上に書き立てた投稿主の正体は不明のまま。どうやらこの会社には小笠原に対する不満がだいぶ溜まっているよう。きっとこのあたりが火口となって、いずれもっと大きなヘイトが噴出するのではないだろうか。日の出鉛筆クーデーターのXデーはいつか。おそらくすべての鍵は里井(小日向文世)が握っている気がする。

(執筆:横川良明)

『人事の人見』<第6話 あらすじ>

いよいよ新卒採用シーズン。面接のサポート役を務めることになった人見(松田元太)は、文房具愛溢れる学生・新山(安藤冶真)の熱意に感動するも、新山は残念ながら不採用に。採用基準に疑問を抱いた人見は、採用担当のウジン(ヘイテツ)に選考に落ちた学生一人ひとりと話し合う場をつくりたいと直談判する。

しかし、実はそんなウジン自身が、日の出鉛筆からの転職を考えていて……。

◇ドラマ『人事の人見』概要

タイトル 『人事の人見』
放送・配信 毎週火曜21時からフジテレビ系で放送
地上波放送後、FODにて最新話を追加
出演者 松田元太/前田敦子/桜井日奈子/新納慎也/
ヘイテツ/松本まりか/小野武彦/
鈴木保奈美/小日向文世
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