【ネタバレ】『銀河の一票』が浮き彫りにするこの国の構造的欠陥。茉莉とあかりは日本の未来を明るいほうへ導けるか?

制度とは、なんだろうか。法とは、誰のためにあるのだろうか。スナック「とし子」の売却問題に直面した『銀河の一票』第3話。そこで描かれているのは、誰も悪くないのに立ち行かなくなってしまう今の日本の話だった。

根拠は正当。なのに、理不尽ばかりが起きるこの国の現状

前回のラストで突然降って湧いたスナック「とし子」の売却騒動。てっきり成年後見人である弁護士の竹林圭吾(中山求一郎)がいいように鴨井とし子(木野花)を丸め込んで、その悪だくみを星野茉莉(黒木華)が打ち破るのだろうな、と思っていた。

しかし、このドラマはそんな陳腐な予想の上をいく。何より面白いなと思ったのが、竹林は別に悪人ではないのである。月岡あかり(野呂佳代)の反論に対し、「お気持ちの話は結構です」と切り捨てるなど、確かにドライなところはある。でもそれは法の番人としては当然のこと。あくまで正当な手続きをもって不動産売却に踏み切っただけ。茉莉が例に挙げたような、自分の報酬のために不当に売却を進めているわけではなかった。

グループホーム入居にあたっての保証会社の件もそうだ。身元保証人がいないという理由で入居を拒否することは不適切という厚生労働省の通達はある。これを根拠に、茉莉は毎月3500円の支払いを取り下げようと考えた。けれど、グループホーム側も無知な市民を情報弱者のように搾取しているわけではなかった。万一のことを考えると、保証人がいない入居者には保証会社をつけざるを得ない。こちらも正当な理由に基づいての現状だった。

代議士秘書を務めていた茉莉には知識がある。でもその知識は机上のものであり、現場の実態にすべて適応し得るわけではない。世の中は、永田町であれこれと交わされている議論よりもずっと複雑にできているのだ。

竹林が言った、なぜ認知症の初期段階で事業譲渡の手続きをしなかったのかという指摘も、客観的に見ればその通り。正当な手続きを踏んでいれば、こんな厄介事は避けられたのかもしれない。でも、とし子がそうであったように、まだ判断力のある高齢者を認知症扱いすることは、本人も周りもはばかられる。手遅れになるところまでいかないと、問題は表面化しないのだ。

介護施設の厳しい現実も描かれていた。職員の年収は200万円ほど。決して高いとは言えない。いや、はっきり言おう。都内に居住していると仮定すると、年収200万円では生活費を支払うので精一杯。貴重な余暇を十分に楽しむ余裕なんてない。グループホームのスタッフはとし子に対しても、他の利用者に対しても、誠意をもって接しているように見えた。高齢者の介護は肉体的にも精神的にも負担が大きい。超高齢化社会の渦中にあるこの国では、いずれ誰もが直面する課題だ。その前線に立ち、この国を支えている人たちが、ゆとりを持って暮らせるほどの賃金を得ていない現状はあまりにも理不尽だ。

『銀河の一票』で描かれていたのは、この国には国民の生活を守るために様々な制度はある。けれど、その運用はマニュアル通りにはいかなくて、様々な局面で軋みが生まれているという日本の現実だった。

人の気持ちは一つじゃないから難しくて、いとおしい

ここからは「お気持ち」の話。そもそも竹林はなぜ店の売却に踏み切ったのか。そこに、とし子の意思を推し量るに十分な材料はあったのか。争点は、認知症の進むとし子が何を考えているのかという話へ移る。

とし子は、自分があかりを縛りつける重しになっていることが耐えられなかった。それは、認知症を発症する前からずっとそうだった。死を考えたあかりにとって、とし子との出会いとスナック「とし子」での暮らしは生きる理由になった。でもその一方で、まだ若いあかりの生き方を自分が狭めてしまっているのではないかという負い目がずっととし子の中にあった。

「きょうからあかりちゃんがママ」というメモの裏に書かれたていたのは、「いつやめてもいいからね」の一文。人の気持ちは一つじゃない。大好きだけど大嫌いとか、悲しいけど腹立つとか、うれしいけど寂しいとか。心の中には、相反するいろんな感情が渦巻いている。あかりにここにいてほしい。だけど、ずっとここにいてもらうことは心苦しい。それが、とし子の「お気持ち」だった。

とし子もまた死を考えていた。あかりととし子は、死にたがっている人同士だったのだ。あかりだけが救われていたわけじゃない。とし子もまた救われていた。そして、そんなあかりが今度は茉莉を救った。となると、やっぱりあのときあかりもまた茉莉に救われていたのだろう。人と人は、そうやって救ったり救われたりしながら、なんとか“生き合っている”。

「あなたほどの人が、どうしてそんな……。なんですか? 誰ですか? 何が、誰が、あなたを、あなたがそんなに価値がないと思わせたんですか」

茉莉が泣きながら言ったあの言葉は、あかりだけに向けられたものではない。この世界で生きているすべての人たちへの言葉だ。私たちは、つい自分を軽んじてしまう。「自分なんて」と卑下したり、「生きる理由」がなければこの世にいることさえ上手にできない。本当はそんなのなくてもいいのに。夢とか根拠がなくなったって、のほほんと楽しく暮らせればいいのに、「私なんて生きていても仕方ない」とうつむいて、「せめてここにいていいと思える何かがほしいと」と価値になるものを追い求めて焦ってしまう。

私たちの自己肯定感を削っているものはなんなのか。それは、この社会の仕組みそのものなのか。茉莉とあかりが立ち向かうのは、日本の社会だ。うわべばかりを取り繕って、実際に困る人が出てもちっとも機能しないハリボテの制度を、毎年およそ2万人の人たちが自ら命を投げ捨ててしまう社会の構造を、変えるために二人は立ち上がる。その戦いに、今、僕は清き一票を投じたいと思っている。

(文・横川良明)

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『銀河の一票』第4話 あらすじ

ついにあかりが都知事選への出馬を決めた。無名のあかりをどうやって当選に導くのか。茉莉の秘策は、「選挙の天才」と仰ぐ五十嵐隼人(岩谷健司)だった。五十嵐は、2年前にも市長選で無名の新人を当選させた文字通り選挙のプロフェッショナル。しかし、ある出来事をきっかけに失脚し、現在は行方がわからないという。茉莉は、新聞記者の雨宮楓(三浦透子)を頼り、五十嵐の消息を追うが……。

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タイトル 銀河の一票
放送日時 毎週月曜22時~フジテレビ系で放送※地上波放送後にFODでも配信
スタッフ 脚本:蛭田直美
音楽:坂東祐大
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧 悠輔
キャスト 黒木 華、野呂佳代、三浦透子、渡邊圭祐、倉 悠貴/
小雪、本上まなみ/
シシド・カフカ、岩谷健司、山口馬木也/
木野 花、岩松 了、坂東彌十郎、松下洸平
URL https://www.ktv.jp/ginganoippyou/(公式サイト)

credit:(C)カンテレ