【ネタバレ】『銀河の一票』は出てくる登場人物みんなのことが大好きになるドラマだった

最終話を終えて、こんなにも清々しい気持ちになったのは久しぶりな気がする。尻すぼみも、期待を裏切られることもなく、画面の前で拍手を送りたくなった最終話。これが舞台なら間違いなく僕は真っ先にスタンディングオベーションを送っていただろう。『銀河の一票』に出会えてよかった。『銀河の一票』と共に3ヶ月を過ごせてよかった。最後となるこのレビュー記事は、『銀河の一票』への感謝を込めながら綴ってみたいと思う。

このドラマは、すべての登場人物を“端役”にしなかった

「私たちは一人ひとりが輝く星で、銀河があんなにきれいなのは、一つひとつの星がきれいだから」

最終演説で、月岡あかり(野呂佳代)はそう話しはじめた。この台詞に、このドラマにおける人物の描き方がつまっていた。たぶんこのドラマを愛するほとんどの人は、出てくる登場人物みんなのことが好きだったんじゃないだろうか。

星野茉莉(黒木華)やあかり、日山流星(松下洸平)といったメインどころはもちろん、鷹臣(坂東彌十郎)や雫石誠(山口馬木也)といった“敵側”に見える人物も。いや、それだけじゃない。「いたしかねます」と意思を貫いた平泉(槙尾ユウスケ)ら秘書室の面々や、あかりの最終演説にやってきた弁護士の竹林(中山求一郎)。転校した親友と再会できた鈴原ほのか(根本真陽)。決して大きくはない役であっても、みんなそれぞれの人生があって、懸命に生きていると感じられた。だから、自然と好きになれた。

このドラマは、すべての登場人物を“端役”にしなかった。物語を進めるための駒にしなかった。あかりが最終演説で話すきれいなことを、きれいごとに感じなかったのは、このドラマがちゃんと一人ひとりを輝く星として描いてきたことを、ドラマを見守り続けた視聴者はみんなわかっているから。つくり手は視聴者を信じ、視聴者もつくり手を信じる。そんな理想的な信頼関係が、ドラマを通して築かれていたように思う。

だからこそ、最後まで名前しか出ることのなかった新座値利という人物の死に涙した。彼もまた精一杯輝いた一つの星だったのだ。

「人が、一人しかいない人が、亡くなってました。生まれて、ご飯食べたり、寝たり、笑ったり泣いたり、悪いことしたかもしれないけど、でも、ひとりぼっちで死ぬしかないっていう気持ちで、最後にきれいな、きれいなもの見たかもしれないのに、それでも、それなのに私、スキャンダルとか、選挙に勝つカードとか、全然、全然わかってなかった」

新座値利が転落死した事故現場で、彼の死に心を寄せた茉莉は、あかりに抱きしめられながら、そう号泣した。結局、新座値利は最後まで顔さえ描かれることがなかった。彼がどんな人かなんてまるでわからない。視聴者にとっては共感の寄せようもない。なのに、悲しい。一人の人が死んでしまったことが、きっと誰かにとって大切な人が亡くなってしまったことが、ひどく悲しい。

悪役なんて役、本当はこの世にはないのかもしれない。誰だって、自分の人生という物語を、自分が主人公としてがむしゃらに生きている。新座値利という人も必死だったんだろう。物語としてはすでに転落死しているところから始まっているけど、最後に屋上から落ちて死ぬために生きている人はいない。尊い一つの命が失われたこと。その死を悼むこと。物語の道具としての死があまりにも溢れ返ってしまっているせいで、そんな単純なことさえ僕自身も忘れていた。

僕たちは長く生きれば生きるほど、どうしても死に慣れてしまう。でも、決して麻痺させちゃいけない。人が死ぬということは、とても悲しいことなんだ。そんな簡単にあってはいけないことなんだ。尊い命が無益に失われていくことがないように、人は、社会は、何ができるのか。名前しか知らない新座値利という人の死は、普段読み飛ばしてしまうニュース記事の中で報じられた誰かの死や事件を思い起こさせてくれた。

最終話で明かされた流星、鷹臣、雫石の胸中

最終話は、これまでなかなか内面が描かれることのなかった流星、鷹臣、雫石の胸中を見ることができた。

愛する妻の命を救うために、鷹臣は権力を濫用した。以降、鷹臣は清濁併せ呑む俗物として政界をのし上がっていった。だが、犯した過ちがずっと胸に引っかかっていた。

「世界全体の幸福のために、個人の幸福は捨てるよ」

犯人グループとの交渉のために、危険を顧みず、ギルバ入りを志願したのは、もちろん出世のための得点稼ぎの面はあっただろうけど、でもちゃんとそこに炊き出しのために被災地へ赴き、被災者から直接声を聞いていたかつての鷹臣の面影が残っている気がした。

そして、そんなギルバ人質事件で名を馳せた流星は、それが党内でのポスト争いを制するための取引材料であったことを暴露する。ずっと腹の内が読めなかった流星だけど、こうして最後まで見てみると、ただ一心に「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」という鷹臣の政治信条を受け継ぎ、それを実現するために奔走した人物だったのだと腑に落ちる。知事選出馬の条件として持ちかけたのも、まるで政略とは関係ない、「またみんなで銀河を見にいく」というものだった。いちばん家族を守ろうとしていたのは、家族との縁が薄かった流星だったのだ。

選挙カーの上で熱弁をふるう姿も真に迫るものがあったけど、個人的にはすべてが終わったあと、藤堂昴(倉悠貴)とカップラーメンをすする姿にじんわりと胸を熱くさせられた。茉莉とあかりほど細かい描写があったわけではないのに、流星と昴の結びつきもまたいとしく美しかった。これも、このドラマがすべての登場人物を「一人ひとりが輝く星」として描いたからだろう。

すべてを終わったあとと言えば、雫石のエピローグにも心が洗われた。緑豊かな小川のほとりで、穏やかな微笑みを浮かべながら絵筆を走らせる。宮沢賢治を愛する雫石は、本来こういう人間だったのだろう。永田町という魔窟から解放されて、やっと雫石も自分らしい道を歩めるようになった。そう思うと、積み上げてきたものをすべて壊す勇気も時には必要なのかもしれない。

きれいなことをあきらめちゃいけない

注目の都知事選は、渾身の演説が効いたのか、流星が勝利をおさめ都知事のイスに就き、副知事として茉莉、あかり、五十嵐隼人(岩谷健司)、雲井蛍(シシド・カフカ)が登用された。試合が終われば、ノーサイド。対立し合った者同士が手を取り合い、お互いの長所を生かしながら、理想の社会を実現するために協力し合う。実際の政治も、これくらいクリーンだったらどんなに晴れやかだろう。さすがにそれはきれいごとすぎるか。

いや、そんなことはない。きれいなことをあきらめちゃいけない。僕たちは目指すんだ、何年かかってでも、こんな世界になったらいいなという、最上級のきれいなことを。

「きれいごとだと揶揄されることを恐れずに、あきらめず探しましょう。銀河が、一つひとつの星が輝き続けられる道を。世界と、あなたと、私の幸福のために」

流星の言葉に応えるように、スマホライトが一つまた一つと灯りはじめる。その美しい輝きは、銀河そのものだった。実際には、こんなにみんなが感化されることなんてないかもしれない。でも、少なくともこの場面でこの演出をきれいごとだとは思わなかった。なぜなら、ここまでちゃんとこのドラマが積み上げてきたものがあったから。揺るぎないメッセージが、視聴者の胸に届いていたから、ファンタジーのようなこの光景を信じられた。

現実はドラマのようにうまくいかない、とわかったふりして肩をすくめるのはもうやめにしよう。その現実を変えていくのは、僕たち一人ひとりの意志だ。

「解釈改憲」という言葉が出てきたとき、ドキッとした。ドラマで出してはいけないワードのように思っていたからだ。そんなふうにタブー化している時点で、僕の中でまだまだ政治はどこか腫れものなんだなと気づいた。政治と宗教の話はするな、と当たり前のようにこの国では言われている。正直、僕の中にもその考えが内面化している部分はある。でも、そんなのおかしい。だって、政治は生活に関わることなんだから。僕たちは、もっとちゃんと政治について話せるようにならないといけないんだ。

スマホのライトを灯すように、自分はこう思うと意志を表明しよう。社会に参加しよう。そうやって自ら光を放つ星が増えることで、ぼんやりとした白い銀河は、眩く美しい星空となるのだ。

(文・横川良明)

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国内ドラマ『銀河の一票』メインビジュアル

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タイトル 銀河の一票
スタッフ 脚本:蛭田直美
音楽:坂東祐大
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧 悠輔
キャスト 黒木 華、野呂佳代、三浦透子、渡邊圭祐、倉 悠貴/
小雪、本上まなみ/
シシド・カフカ、岩谷健司、山口馬木也/
木野 花、岩松 了、坂東彌十郎、松下洸平
URL https://www.ktv.jp/ginganoippyou/(公式サイト)

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