物語も中盤に差しかかってきた『さよならノワール』。新たな情報も増え、黒木夏海(小池栄子)と白石絵梨子(北香那)の背景もより解像度が上がってきた。この息が合ってないようで合っているバディが出会った必然性はどこにあるのか。今回は、ここまでの内容をもとに二人の人物像を整理する。
山崎が黒木に伝えようとしたことは何だったのか?
白石のカウンセリングを受けることになった黒木。そこで語られたのは、上司である山崎創(渡部篤郎)の失踪事件と、娘の夕夏(西島海心)との関連性だった。これまでも山崎の幻影を見たり、夕夏が消える夢を見るなど、黒木の心に両者が深く影を落としている様子が描かれてきた。黒木の告白によると、娘を手放すきっかけとなったのが、山崎からの連絡だったという。
1年前、夜中に山崎から話があるので今から出てこられるかと請われた黒木は、眠っている夕夏をひとり家に置いていくことに躊躇しつつも、山崎の呼び出しに応じた。しかし、指定された場所に行っても山崎は現れず、それどころか目を覚ました夕夏が黒木を探して家を飛び出し事故に遭う。この事故を黒木の落ち度とされ、夫から娘の親権を奪われたのだった。
ここで気になる疑問点は3つ。
・山崎は、黒木に何を話そうとしたのか
・山崎は、なぜいなくなったのか
・警察と暴力団である祥仁會は、山崎の失踪にどう関わっているのか
第2話で、白石が五十畑修(岡部たかし)から渡された記事には、山崎が暴力団と癒着のような関係にあり、警察の機密情報を漏らしたのではないかという旨が書かれていた。これはトラップだとしても、祥仁會の三代目会長・不二仁(浅野和之)が山崎を気にしているような素振りを見せ、刑事課の桑原栄二(荒川良々)と中谷健人(味方良介)が鴨居卓海(岡山天音)を使って黒木に探りを入れようとしているところから見て、警察と祥仁會がそれぞれ山崎の失踪に何らかの関わりがあることは間違いないだろう。
どちらかというと、闇が深そうなのは警察のほうだ。五十畑は白石に「警察は闇が深いところがある」と警告していた。また、黒木も山崎の失踪について一方的な形で本部に巻き取られたと証言していた。警察には、探られたくない腹がある。山崎が何を突き止めたのかが、今後の展開の最も重要な謎だ。
そして、その真相を犯罪被害者支援室という本作の肝とどう結びつけるかが、脚本家・井上由美子の腕の見せどころだろう。単に警察組織の不正というような話であれば、凡百の刑事ドラマと変わらない。このドラマは、犯罪被害者支援室を舞台にしているところが最大の独自性だ。消えた上司の行方を追うという縦糸と、犯罪被害者を支援するという横糸がリンクして、初めてカタルシスが生まれる。被害者の痛みに寄り添う黒木の姿勢が、どう突破口となっていくかを注視したい。
田村の言った「過酷な経験」とは何を指しているのか?
一方、白石サイドにも気になる新情報が出てきた。ポイントは2つ。
・両親は、白石が小学生のときに離婚している
・憎み合う両親を見て、なぜ人は人を憎むのかを知るために心理職に就いた
白石が鴨居に打ち明けたのは上記の2つだが、引っかかったのはむしろ田村貴子(戸田恵子)の台詞だ。
五十畑と白石について話をする中で「幼少期に過酷な経験をした場合、平穏な状況に窮屈さを感じ、刺激を求めやすくなる人がいます」と分析していた。両親の離婚が子どもに精神的なダメージを与える可能性は十分にあるが、それを「過酷な経験」と形容するのはややオーバーに感じる。もちろん特定の出来事に対し受けるダメージは人によって違うので一概には言えないけど、田村の言う「過酷な経験」がストレートに両親の離婚を指しているように思えない。白石にはまだ明らかになっていない過去があるのではないか。
実際、五十畑は白石が黒木に近づくことを過剰に恐れている。なぜ黒木に興味を持ち、黒木の素性や過去を知ろうとすることが、二人にとって危険なのか。
黒木と白石の共通点は、人間関係を構築することが不得手なことだ。人にうまく心を開けない黒木と、人とうまく距離をとれない白石。前クールの『銀河の一票』で美しき女性バディを描いた脚本家・蛭田直美は「バディものとは、孤独と孤独が出会う話である」と説いた。
この哲学は、黒木と白石にもそのまま引用できる。孤独な二人が深く結びついたとき、そこに生まれるのは救いか、あるいは共依存か。井上由美子はここまであえて乾いたタッチで本作を書き続けているように感じるが、ここから黒木と白石の関係がどんなドラマを生み出していくかが、本作の評価をくだす決定打となりそうだ。
そしてある意味、黒木と白石以上に視聴者を惹きつけてやまない鴨居についても、具体的な情報が出てきた。鴨居は、警察を志した理由として「人はなんで罪を犯すのか」に興味があったと打ち明けた。つまり、鴨居の身近に何かしら罪を犯した人間、もしくは犯罪に巻き込まれて被害に遭った人間があったと見ていいだろう。
ただ、その全貌はまだわからない。ここまで黒木にせよ白石にせよ鴨居にせよ、何らかの心の傷を負っていることは確かだが、その内容ははっきりしないという「匂わせ」が続いており、物語としてやや足踏み感がある。連ドラとしても折り返しに入ったところなので、そろそろグッとアクセルを踏んでくれることを期待したい。
(文・横川良明)
『さよならノワール』第6話 あらすじ
スーパーの駐車場で、一人の男の子が車にはねられた。車を運転していたのは、人気芸能人の水沢恭太(唐木俊輔)。一方、はねられたのは、6歳の少年・林田将斗(橋本則行)であり、不意に母親のあかり(恒松祐里)の手を離したことから事故が起きたという。水沢が人気者であったため、ネット上では事故の責任は母親にあるとあかりを責める声が噴出。さらには、あかりの家の前に大量のゴミが置かれるなど、嫌がらせはあかりの身の回りにまで及んでいく。黒木と白石は、あかりを守るために支援に出るが……。
『さよならノワール』概要
| タイトル | 『さよならノワール』 |
| 放送日時 | 毎週火曜21時 |
| スタッフ | 脚本:井上由美子 主題歌:chilldspot「ドラマ」(RECA Records) 音楽:菊地成孔 プロデュース:狩野雄太 制作プロデューサー:清家優輝、岸川正史 衣装:伊賀大介 心理監修:石橋昭良 警察監修:石坂隆昌 演出:河毛俊作、清矢明子、柳沢凌介 制作協力:ファインエンターテイメント 制作著作:フジテレビ |
| キャスト | 小池栄子、北 香那、岡山天音、荒川良々、味方良介、濱尾ノリタカ/ 眞島秀和、戸田恵子、渡部篤郎 ほか |
| URL | https://www.fujitv.co.jp/sayonaranoir-cx/(公式サイト) |
『さよならノワール』(C)フジテレビ