『さよならノワール』もついにクライマックス。セミファイナルとなる第10話は、物語最大の謎であった、山崎創(渡部篤郎)失踪事件の核心に迫る回だった。なぜ山崎は消えたのか。どうして闇カジノに関わっているのか。真実の扉が、いよいよ開かれようとしている。
正体不明の内通者と元上司。二つの謎が結ぶ真実とは?
この第10話では、二つの謎が同時並行的に描かれていた。
一つ目の謎が、闇カジノのフロアレディ・紗耶香(中村里帆)の正体だ。闇カジノのスタッフ・川島ユウジ(緒形敦)から暴行を受けているところを、黒木夏海(小池栄子)と河口真二郎(眞島秀和)によって助けられた紗耶香。しかし、支援室に保護されたのちも、素性はおろか本名すら明かそうとしない。
なぜ彼女は自分の正体を隠すのか。なぜ危険な闇カジノと関わりを持っていたのか。河口に声をかけられたとき、「あんなカジノ、潰れてほしいから」と言っていた。つまり紗耶香は、この闇カジノか、あるいは闇カジノを運営する祥仁會に何かしらの恨みを抱いていたと考えられる。その復讐が目的で、闇カジノに潜入していたのか。だから、河口から内通者になることを持ちかけられたときも、あっさりと承諾したのか。黒木と白石絵梨子(北香那)の前で、紗耶香は「本当は私……」と何かを打ち明けようとした。あのとき、彼女は何を言おうとしたのか。あの台詞のあとに続く言葉が、真実の扉を開く鍵となりそうだ。
二つ目の謎が、山崎だ。どうやら闇カジノで働いていた男は、山崎本人で間違いないらしい。となると、山崎は警察組織に背いて、反社に転じたことになる。警察から見れば一大スキャンダルだ。しかし、そこにはきっと何らかの理由があるはず。その理由が最終回の争点となる。
気になる点は二つ。まず署長の妹尾和馬(利重剛)はなぜ黒木と河口が山崎を追うことをよく思わないのか。それには、組織犯罪対策係の係長が反社に寝返ったというスキャンダル以上に明るみに出てほしくない何かがあるように思えてならない。そもそも山崎が失踪した当初も、早々に捜査が打ち切られた。警察は、何を隠しているのだろうか。
もう一つ気になるのは、失踪直前に山崎が黒木に何を伝えようとしたかだ。山崎が姿を消したのは、その何かをめぐってトラブルに巻き込まれたからと考えられる。また、撃たれる直前、山崎は誰かと待ち合わせしているようだった。何らかの取引を行なっていたのだろうか。それゆえ相手から狙撃されてしまった。警察と反社。相対する組織をまたぐ何かを、山崎は掴んでいたのか。それが紗耶香の正体とどうつながっているのかも注目だ。
眞島秀和&渡部篤郎がイケオジ頂上決戦!
そんなストーリーの面白さもさることながら、今回は眞島秀和の色気が爆発していた回だった。若いだけの好青年には出せない、シニカルで、くたびれた男の気配というのはなぜこんなにも官能的なのだろう。チュッパチャップスをしゃぶっているだけなのに、まるで紫煙をくゆらせているようにセクシーだ。ガツガツしていない、力の抜けた感じもいいし、河口の身を案じる中谷健人(味方良介)にグーパンチをかますあの飄々とした余裕も、シワだらけの笑顔も、まるでイケオジの標本である。
死亡フラグがビンビンに立っている感があったので、とりあえず河口が凶弾に倒れることがなくてよかった。そんなに露骨に描かれているわけではないが、黒木に想いを寄せているらしい。だったら、もうちょっと二人で大人のラブコメをしてくれてもよかったんやで……?
イケオジ具合で言うと、渡部篤郎も負けていない。最近はすっかりグレイヘアも板についた渡部篤郎だが、この人のちょっと世捨て人みたいなやさぐれ感は若い頃から魅力的だった。それが、年をとってますます退廃感が増してきたではないか。『スワロウテイル』で敵の頭に猟銃ぶっ放す渡部篤郎に恋をして30年。私の目に狂いはなかった……という思いです。
次回予告を見る限り、どうやら山崎は記憶を失っているらしい。そんなの、渡部篤郎の捨てられた子犬感がますます爆増してしまう。ここまで限られた出番のみの出演だった渡部篤郎が、最終話でどこまで枯れた男の魅力を発揮するか。イケオジ界の頂上決戦としても、最終回は必見である。
また、回を重ねるごとに信頼関係を深めていった白石と鴨居卓海(岡山天音)の関係がどう決着するのかも、密かな楽しみどころ。野暮を承知で言うと、この二人に関しては恋愛関係になってもいいと思うのですが、どうでしょうか。男女が仲良くしていると何でもかんでも恋愛に結びつける人たちを撲滅したい委員会会長の僕ですが、この二人にはりくりゅうくらい「付き合ってるんだろ〜」と言いたい。そして本当に付き合ってほしい。
また、山崎の失踪事件に決着をつけた黒木がどんなエンディングを迎えるかも気になる。黒木の場合、ポイントはやはり娘との関係だろう。決して感情表現が豊かなわけではないけれど、黒木が娘を大切に思っているのは間違いない事実。できれば娘と関係が修復するといいのだけど、どうなるのか。それぞれの心に落とした深い影(=ノワール)とさよならできる結末を望みたい。
(文・横川良明)
『さよならノワール』最終話 あらすじ
黒木と河口の目の前で撃たれた山崎だったが、幸い一命は取り留める。だが、山崎は記憶を失っており、自身が警察官であったことも、部下の黒木のことも覚えていないという。妹尾に命じられ、山崎の支援をすることになった黒木は、五十畑修(岡部たかし)に助けを求める。五十畑との面談の結果、山崎は「解離性健忘」(※精神的な苦痛が大きすぎるときに、心が自分を守るために記憶を切り離す症状)ではないかという診断がくだる。山崎は1年前、目を覚ますと大怪我を負っていたらしい。はたして1年前、山崎の身に何が起きたのか。失われた記憶を取り戻すべく、黒木は山崎に寄り添う。
『さよならノワール』概要
| タイトル | 『さよならノワール』 |
| 放送日時 | 毎週火曜21時 |
| スタッフ | 脚本:井上由美子 主題歌:chilldspot「ドラマ」(RECA Records) 音楽:菊地成孔 プロデュース:狩野雄太 制作プロデューサー:清家優輝、岸川正史 衣装:伊賀大介 心理監修:石橋昭良 警察監修:石坂隆昌 演出:河毛俊作、清矢明子、柳沢凌介 制作協力:ファインエンターテイメント 制作著作:フジテレビ |
| キャスト | 小池栄子、北 香那、岡山天音、荒川良々、味方良介、濱尾ノリタカ/ 眞島秀和、戸田恵子、渡部篤郎 ほか |
| URL | https://www.fujitv.co.jp/sayonaranoir-cx/(公式サイト) |
『さよならノワール』(C)フジテレビ