『フェイクニュース』『フェンス』でタッグを組んできた、脚本:野木亜紀子×プロデュース:北野拓がついに地上波民放連続ドラマというフィールドに躍り出た。それが、10月7日からスタートした『ポリティカルパン』だ。注目作の多い秋クールの中でもとりわけドラマファンから高い関心を集めていた本作。初回はその期待に応える最高の滑り出しとなった。
石原さとみ×河合優実による、時限爆弾付きのシスターフッド
舞台は、架空の国・ニッポニア。政治の腐敗したその国の官房長官室には、大きな金庫があるという。官房機密費という名目のそのお金は、領収書不要、使途を公開する義務もなし。しかも、使った分だけまた財務省から補填される。
そんな政界のブラックボックスである“お宝”に目をつけたのが、大泥棒の如月弥生(石原さとみ)。『ポリティカルパン』は、ダークな政治のお金をめぐって怪盗と政界の狸たちが化かし合いを繰り広げる極上エンターテインメントだ。
とにかく初回から野木亜紀子らしい風刺が随所に効いているところが面白い。弥生の行きつけの定食屋は、物価高騰により閉店。老人は孤独死。若者は手取り18万円で「わりといい」と言うくらいには低賃金で飼い慣らされている。政治家はいかなる不正も「調査中です」と煙に巻き、それ以上追及しないマスコミはもはや骨抜き状態。
こうした鋭いパンチが次々と連打されていくのだけど、そこまで説教くさくならないところが野木のセンスの良さだ。ニッポニアという架空の国と大泥棒というファンタジーめいた設定が、エンタメとしての建て付けを強固なものとしている。
そこに、魅力的なキャラクターが集結することで、ますます味わいは軽やかに。まず目を引くのが、如月弥生と小早川雅(河合優実)のシスターフッドだ。ショートパンツから持て余したように突き出る雅の白い脚。その上に弥生が馬乗りになって、首の後ろに手を回す仕草はドキドキするほど艶かしい。酔っ払った弥生と雅が寝そべる構図も、夏の夜のように甘酸っぱい。
同じく政治を題材とした『銀河の一票』や、美容整形を題材とした『ダウンタイム』など、世はまさにシスターフッド全盛期。その流れを汲むような、石原さとみ×河合優実の組み合わせは俄然視聴意欲をかき立てる。
しかも、その関係が「弥生はコンサルである」という嘘の上に成り立っているところがスリリングだ。この嘘は早晩必ず暴かれるだろう。そのとき、弥生と雅の関係はどう変化するのか。時限爆弾付きの信頼関係の行方が、この物語の牽引力だ。
与党の金庫番である経理部長・夏目将門(高橋一生)の存在も光っている。解散総選挙のニュースに悪態をついていたところから見て、将門が現状の政治に不満を抱いていることは明白だ。もともとは財務省の官僚。そこから政治家に転身し、当初はどの派閥にも属していなかったのが、2年前の派閥解散後、元総裁の権力者・小早川士郎(草刈正雄)らの一派に急接近したという。これには、将門なりの思惑があると見ていいだろう。
将門はなぜ政界に進出したのか。議員となって何を成し遂げようとしているのか。ひとまずは、雅という神輿を担ぐ弥生と対立するようだが、案外目指す世界は近いのかもしれない。石原さとみ×高橋一生の共闘が見られる可能性にも大いに期待したいところだ。
夢を笑われた女たちが、どデカい夢を叶えるドラマ
こうしたキャラクーたちが、みんなそれぞれ表の顔とは違う一面を持っているところが心憎い。いちばんわかりやすいのは、雅だろう。世間からは乱痴気騒ぎを起こしてばかりのバカ娘という烙印を押されている雅だが、決してただの脛かじりの落ちこぼれではない。「一票の格差」の意味をすらすらと答えられる程度には、知識も常識も備わっている。
それもそのはず。中学生の頃までは、政治家になることが彼女の夢だった。なぜ雅はその夢を捨てて、自暴自棄になったように夜遊びを繰り返すのか。「腐ってる」と吐き捨てた通り、雅は政治家たちに不信感を抱いている。彼女を失望させたのは、おそらく父の士郎であり、その取り巻きだろう。永谷町の住人になると、みんな腐っていく。だから、雅は距離を置いた。
一方、弥生もただ口の上手い泥棒ではない。孤独に死んだ老人のために献杯し、教会にそっと寄付をする。立場の弱い人、困っている人に寄り添う優しさが、弥生にはある。
「大泥棒になって、みんなにお金をあげたい」
富の再分配が、弥生の信条だ。きっとそこには彼女の生い立ちが関わってくるのだろう。当然、格差社会と理不尽な自己責任論への痛烈なカウンターパンチも込められている。
貧富の格差をなくしたい弥生と、世襲をなくしたい雅。そこにあるのは、誰もが謂れのない差別や不利益を被ることなく、チャレンジできる公平な社会の実現だ。理想論と笑う人もいるかもしれない。事実、彼女たちも夢を笑われてきた。
そんな夢を笑われた悔しさを持つ二人がタッグを組んで立ち上がる。こんな夢のある物語に、心が躍らないわけがない。泥棒という表の世界では悪党の弥生が、政治という表の世界では公正なはずの世界にどんな嵐を巻き起こすのか。毎週水曜日がワクワクする3ヶ月が始まった。
(文・横川良明)
『ポリティカルパン』第2話 あらすじ
自宅の物品を売り払い、雅が用意できたのは供託金の300万円のみ。一方、与党から公認を得た兄・颯(寛一郎)は万全のバックアップと資金で選挙活動に乗り出す。選挙資金を得るため、雅は祖母から遺産として譲り受けた千羽の自宅を担保に銀行から融資を受ける。無断で自宅を選挙事務所にした雅に颯は激怒。兄妹ゲンカを尻目に、弥生と乾(渡部篤郎)は雅を当選させるべく市民を味方につけるストーリーを画策するが……。
『ポリティカルパン』放送・配信概要
| タイトル | 『ポリティカルパン』 |
| 放送日時 | 毎週水曜22時からフジテレビ系で放送 FODでは地上波放送後に次回放送分をプレミアム先行配信 |
| 脚本 | 野木亜紀子 |
| プロデュース | 北野拓 |
| 演出 | 髙野舞、谷村政樹、及川拓郎 |
| キャスト | 石原さとみ、高橋一生、河合優実、寛一郎、川西拓実(JO1)/ 酒向芳、間宮啓行、岩松了、古舘寛治、草刈正雄、渡部篤郎 |
| URL | https://www.fujitv.co.jp/politicalupin/(ドラマ公式サイト) https://fod.fujitv.co.jp/title/01bl/(配信ページ) |
(C)フジテレビ