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【ネタバレ】松田元太と人見廉の一番の共通点とは?『人事の人見』に見る「仕事を休めない人」の心理

人事の人見』(フジテレビ系)第2話が放送された。
 
今回のテーマは、過重労働。労働基準監督署の調査により、商品企画部の企画チームリーダー・植木(珠城りょう)が未申告で残業を行なっていることが判明する。だが、決してサービス残業を強制されているわけではなく、本人が自分の意思で行っているらしい。
 
仕事熱心なのは意欲の表れかと思いきや、どうやらそんなに単純なものではないようで……。第2話から見る日本の職場の問題点と、主人公・人見廉(松田元太)の特徴について語りたい。

人見廉はただのポンコツか、それとも……?

働きすぎは良くないが、もっと働きたいという気持ちは否定されるべきなのか。働き方改革が広まって以降、様々なドラマで取り上げられてきたジレンマである。だが、今回の場合、問題はさらに複雑だ。
 
なぜなら、植木は単にやる気があって働きすぎているわけではないから。彼女が休めないのは、危機感のせいだった。かつて植木はある事情で仕事に穴をあけた結果、自らが考えた新商品の企画を同僚の国枝(渡辺邦斗)に奪われてしまった。休んだら、自分の席を奪われる。だから、植木は休めなかった。
 
他の人に仕事を任せられないという植木の欠点も、元を辿れば彼女の抱える危機感が理由だった。誰かに仕事を任せたら、その人に手柄を奪われる。だから、自分ひとりで抱え込んでしまう。結果、過重労働はどんどん悪化する一方だった。
 
休んでも大丈夫と思えないから、休めない。職場における心理的安全性は、近年の人事の重要課題だ。ここに人見はどう斬り込むか。その解決策は、予想以上に型破りだった。
 
今回の人見の特徴は、人見自身は何もしていないということ。なんだったら騒ぎを大きくしただけである。もともと人見が考えた作戦は、植木ら関係者を倉庫に閉じ込め、脱出ゲームを通じて、みんなで協力することの重要性を気づかせるというものだった。ところが、人見が鍵を紛失してしまい、本当に出られなくなってしまう。
 
人事部のメンバーが人見の1日の行動を思い出していった結果、鍵のありかが判明するというのがオチで、「俺一人じゃどうにもなりませんでした。みんなの力があったからなし遂げられました!」と感謝する人見を見て、植木もまた人に頼れるようになる。
 
第1話が常識外れの行動で周りを振り回しているようで、実はちゃんと解決の筋道を立てていたのに対し、第2話は完全なるラッキーパンチ。人見は、ただうろたえていただけである。主人公だからって、なんでもできなくていい。主人公が、問題を全部解決しなくてもいい。人見は『無能の鷹』(テレビ朝日系)の系譜に連なる、ポンコツ型主人公と言っていいだろう。
 
だが、そうした人間を排除しない。全員が四番打者の野球チームが強いのかと言われると意外とそうでもないように、全員がシゴデキだからといって組織がうまくいくとは限らない。できない人をいかに受け入れながら、チームを回していくか。人見が人事部に放り込まれた狙いは、案外そんなところにあるのかもしれない。
 
ただ、本当に人見がただのポンコツかどうかはまだこの後の展開を待たないと言い切れない。今回の大ポカも、実は計算の上というのもギリギリ考えられなくもない含みが、人見にはある気がする。
 
そういえば、以前松田元太に取材したとき、「大河ドラマに出たい」と目標を語っていたので、演じてみたい歴史上の人物を聞いたら「桃太郎」と答えていた。まだ彼のおバカキャラが広く知れ渡る前というのもあり、その天才すぎる回答に衝撃を受けた。
 
天才なのか天然なのかわからない。もしかしたら、それこそが松田元太と人見廉の一番の共通点かもしれない。

休めないのは、個人の問題であるべきではない

一方、人事部を舞台としたドラマとして、問題の争点がややぼかされているのが気になった。
 
植木が仕事を休めないのは、不妊治療を優先した結果、国枝に手柄を奪われたことが原因だった。これに関しては、国枝は植木以上に問題整理能力が高く優れたリーダーであることが判明し、必ずしも上に取り入るのがうまいから評価されたわけではないという決着にはなっていた。
 
が、それと植木が担当から外されるのはまったくの別問題である。あの商品を企画したのは、植木だった。リーダーシップと企画力は別軸で評価すべき事項であり、企画者が正当に評価されない組織風土の問題点が曖昧に流されてしまったようなモヤモヤが残った。
 
また、植木が仕事を休んだ理由は、不妊治療という極めてプライベートな事情だった。もっと言えば、そもそも植木と一緒に企画を考えていた先輩も、企画が形になる前に妊娠出産を理由に会社を去っている。もちろん先輩が自分の意思で会社を辞めたとも考えられるが、ライフステージに伴う働き方の変化に日の出鉛筆がカバーできておらず、会社全体の問題とすべき事柄を個人の問題にすり替えているようにも見えた。
 
まだまだ問題の多い日の出鉛筆人事部。みんなが笑って働ける職場は実現できるのか。引き続き見守っていきたい。

(執筆:横川良明)

『人事の人見』<第3話 あらすじ>

日の出鉛筆では、就業規則によって副業は禁止されていた。しかし、昨今の副業ブームもあって、社員の中に副業の疑いがある者が続出。人事部は、それらに対し適切な処分を下すように総務部長の石郡(中田顕史郎)に迫られる。
 
そんな中、VTuberとして活動している研究開発部の土橋(山口まゆ)から、VTuberは副業かどうか相談を受ける。会社以外での個人の活動に会社はどこまで制限をかけられるのか。人事部が頭を悩ませる中、人見が思いがけない行動に出て……。

◇ドラマ『人事の人見』概要

タイトル 『人事の人見』
放送・配信 毎週火曜21時からフジテレビ系で放送
地上波放送後、FODにて最新話を追加
出演者 松田元太/前田敦子/桜井日奈子/新納慎也/
ヘイテツ/松本まりか/小野武彦/
鈴木保奈美/小日向文世
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