【ネタバレ】今期の大本命がいよいよ出馬!『銀河の一票』は『エルピス』に続く熱狂のドラマとなるか?

今や「面白いドラマが観たいならカンテレ」はドラマファンの共通認識。その確固たる信頼を築いた立役者の一人が、佐野亜裕美プロデューサーだ。『大豆田とわ子と三人の元夫』『エルピス-希望、あるいは災い-』と連ドラの可能性を拡張するような良質な作品を手がけ、準キー局ながらキー局に負けないブランドを確立した。

『エルピス』から3年半。ついに佐野Pが新作を世に放つ。脚本は、『あの子の子ども』の蛭田直美。メイン監督は、『春になったら』の松本佳奈。まさにチームカンテレで挑む題材は、政治と選挙だ。

新ドラマ『銀河の一票』は、政治不信の現代にどんな風穴を開けてくれるだろうか。

私たちは世界を変えることができるのか

思えば、『エルピス』は、主人公・浅川恵那(長澤まさみ)がおかしいと思うものを飲み込めなくなったところから物語が始まった。この国に横行する腐敗と不正、そしてそれらを覆う隠蔽体質。理不尽に対し“飲み込まない”と決めた浅川が、冤罪事件の調査を通じて権力と戦う姿は、熱狂に似た喝采を巻き起こした。

『銀河の一票』の主人公・星野茉莉(黒木華)もまた“飲み込まない”女だ。父・鷹臣(坂東彌十郎)は与党幹事長。政界の大物の娘であり、父の秘書を務める茉莉は、周囲から「お嬢」と呼ばれている。そこには、世間知らずの温室育ちという冷笑のニュアンスが少なからず含まれている気がした。実際、茉莉は何かあると父親から「わきまえなさい」と嗜められ、おじさんウケを狙ってピンクの服を選ぶなど、女として器用に立ち回るしたたかさも持ち合わせていた。

だが、第1話で茉莉はそうやって無理して飲み込んでいたものと戦うことを決める。きっかけは、父宛に届いた一通の手紙だ。「あなたが殺した」という告発文。楢ノ木医科大学の医学部長が転落死した事件に、鷹臣が関与しているかもしれないという疑惑が浮上する。真相を確かめるために茉莉は行動を起こすが、信頼して相談を持ちかけた幼なじみの日山流星(松下洸平)に裏切られ、鷹臣の知るところに。虎の尾を踏んだ茉莉は、一夜にして政治家秘書というポジションを失う。

ただ正しいことがしたい。それだけなのに、それだけのことができない。世の中を変えるなんてことは、個人の力では不可能。みんながそうやってあきらめて、身の程をわきまえて、いろんなことを無視した結果が、今の日本だ。私たちは世界を変えることができるのか。『銀河の一票』は、『エルピス』とはまた違う角度から社会に一石を投じようとしている。

国民を信じていないという意味では、茉莉も鷹臣も同じだった

主演は、黒木華。いかにも中年男性が好む大和撫子的な黒木華が、目指す何かを見つけると、それに向かって一直線なヒロインを演じる。そこに意味がある。

茉莉は点字ブロックを荷物で塞いでいる男性に臆せず注意する正義の人だが、だからと言って純真無垢なわけでもない。自分の思い描いた絵図通りの反応を大衆が示すと、「簡単だよね、国民って」と、どこか絶望しているようにこぼした。この国を良くしたいという思いがあるからこそ、自分が思うほど国民が政治に関心も問題意識も持っていないことに、茉莉は歯がゆさを抱えていた。国民を信じていないという意味では、茉莉も鷹臣も同じだった。

茉莉をそうさせてしまったのは、政界という閉鎖的で特権的な世界だろう。永田町に閉じこもっているだけでは、世の中は見えてこない。父に追放されたことで、茉莉は市井へと足を踏み入れた。ここから茉莉は好感度をコントロールするための言葉ではなく、ちゃんと国民一人ひとりの心に届く言葉を書いていく。あのサンドイッチのように、誰かに影響を与える言葉を茉莉が原稿に書けたとき、このドラマは一つのクライマックスを迎える気がする。

個人的には、ピンクの服を選んだことに対して、おじさんウケを狙っただけではなく、「可愛いなと思って。私に似合うと思って買ったんです」と言ったところが、すごく良かった。昨今のドラマの流れでいえば、おじさんウケを狙ってピンクの服を選んでしまう描写自体は、もはや定石。それほど目新しいわけではない。

でもそこで、そんな可愛らしい服を着たいと思う気持ちも否定されるものではないというところまで踏み込んだことに、次の潮流を感じた。「ダサピンク」という現象が広まり、ピンク=女性が好きというステレオタイプに抗う声が高まる一方、でもやっぱりピンクが好きという本音を大っぴらに言いづらくなっている向きを感じる。男性側の勝手な女性像に嵌められたくない気持ちと、自分の好きなものは好きという気持ちは両立する。ピンクを可愛いと思う茉莉に、愛すべき人間味を感じた。

時代にマッチした野呂佳代の明るさ

そんな茉莉のバディとなるのが、月岡あかり(野呂佳代)だ。野呂本人の持つ大らかで親しみやすい雰囲気がそのまま投影されたキャラクターは、まさに陽性の人。見ているだけで気持ちが明るくなる人物であり、「強さって、明るさ」という茉莉の亡き母の言葉を借りるなら、まさに強い人だ。世の中が暗いときほど、こういう明るい人に惹かれる。野呂が俳優として躍進を遂げているのも、アイドル時代からさまざまな苦労を経験しつつも、明るさを失わない彼女の空気感が、時代の気分に合っているからだろう。

だが一方で、あかり自身にも複雑な過去があることが暗に仄めかされている。茉莉が自殺をしようとしていると勘違いしたあかりは、「決めたの、次はもう絶対に離さないって」と必死になって茉莉を止めた。つまり、彼女は一度誰かの手を離したことがあるということだ。

希望を失った茉莉にとって、あかりの存在は文字通り進むべき「明るい方」だった。と同時に、非常階段にいた茉莉をあかりが見つけられたのは、茉莉の持っている電球のお守りが光っていたからだという。しかし、電球のお守りはすでに壊れて光らない。ならば、あかりの見た光とはなんなのか。あかりにとっても、茉莉は希望の星だったということだろう。『銀河の一票』は正反対の二人の女性が、お互いを北極星として前に進むドラマだ。

その他のキャストとしては、流星を演じる松下洸平に期待がかかる。持ち前の柔らかい雰囲気から、優しく誠実なイメージが定着している松下だからこそ、こうした好感度は高いが腹の知れない男が絶妙に合う。ぜひ何層にも折り重なったキャラクターで、視聴者を魅了してほしい。

最後に、最も魅力を感じたキャラクターとして、車椅子のインフルエンサー・星野桃花(小雪)を挙げたい。わざとバリアフリーではないお店に行って注目を集める炎上商法上等な図太さ。一方で、夫である鷹臣の視界には自分ような障がい者は片隅にも入っていないと見抜いている冷静さ。その上で、自分なりのファイティングスタイルを貫く豪胆さ。どれをとっても痛快だ。『エルピス』でいうなら、岡部たかしの演じた村井のような人間らしさを感じた。

こうしたサブキャラクターまで練り込まれているドラマは、信頼できる。今期の本命として、春ドラマという選挙戦を制してほしい。

(文・横川良明)

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『銀河の一票』第2話 あらすじ

茉莉に都知事になってくださいと懇願されるが、政治に詳しくないあかりは茉莉の依頼を頑なに固辞。政界に戻るには、あかりを都知事に押し上げるしかないと考える茉莉は、懸命にあかりを説得しようと試みる。
一方、鷹臣は流星を都知事候補に擁立しようと暗躍。運命の投票日に向けて、熾烈な都知事選がスタートする。

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タイトル 『銀河の一票』
放送日時 毎週月曜22時~フジテレビ系で放送※地上波放送後にFODでも配信
スタッフ 脚本:蛭田直美
音楽:坂東祐大
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧 悠輔
キャスト 黒木 華、野呂佳代、三浦透子、渡邊圭祐、倉 悠貴/
小雪、本上まなみ/
シシド・カフカ、岩谷健司、山口馬木也/
木野 花、岩松 了、坂東彌十郎、松下洸平
URL https://www.ktv.jp/ginganoippyou/(公式サイト)