【ネタバレ】点字ブロックに秘められた過去。『銀河の一票』は死にたがりたちが出会うことで救われる物語だ

思えば、このドラマでは第1話から点字ブロックをシンボリックに用いてきた。第1話では星野茉莉(黒木華)が点字ブロックの上に鞄を置く男性に注意をし、第2話では月岡あかり(野呂佳代)が点字ブロックを塞ぐ自転車をどけていた。さらに、第4話では“ガラさん”こと五十嵐隼人(岩谷健司)が男子高生たちに点字ブロックの存在を指摘。このドラマにおいて点字ブロックは、存在が見えにくくされている人たちの小さな声に耳を傾けられる人間であるかどうかのサインだった。

けれど、その点字ブロックにこんな物語が込められているとは思わなかった。『銀河の一票』第6話は、政治とは何かを改めて考えさせられる回だった。

透と明は、茉莉とあかりだった

この第6話から大きく変わったことの一つが、オープニングのタイトルバック。これまでは茉莉、あかり、日山流星(松下洸平)の3人が商店街で大衆にもみくちゃにされながら踊るというものだった。これ自体が、世論に踊らされていることへのアイロニーになっていて非常に示唆的だったのだけど、今回からはそこにガラさん、雲井蛍(シシド・カフカ)らアベンジャーズに、新聞記者の雨宮楓(三浦透子)と暴露系インフルエンサーの白樺透(渡邊圭祐)も加わった。流星の立ち位置はまだはっきりしないので除くとして、少なくともこのタイトルバックに登場するメンバーが“チームあかり”陣営と見ていいだろう。

第6話は、その楓と透にスポットが当てられた。家庭環境に問題がなく、学校生活も順調で、困ったことが特にない人生に欠落感を抱えている楓にも胸のつまるものがあったけど、個人的には透の過去にむせび泣くほど心を持っていかれてしまった。それは、悲しくて、やりきれない、でもだからこそずっとずっと忘れられない、孤独な魂の出会いと別れの物語だった。

持ち前の容姿の美しさから、母親に過度な愛情を寄せられ、自分の顔にしか興味がない母親や周囲にうんざりし、自暴自棄な毎日を送っていた透。そんな中、出会ったのが、楠木明(望月歩)だった。明は目が見えなかった。だから、明には透の顔がわからなかった(そして、彼が自殺用のロープを持っていることも)。初めて自分を容姿で判断しない存在に出会えた透は、明によって救われた。

二人で始めた動画配信。灰色だった世界は、突然色を帯びた。最初の動画の再生数は、たったの15回。だけど、恥ずかしくも情けなくもなかった。明と一緒ならすべてが楽しかった。

この構図は、誰かに似ている。言うまでもない。茉莉とあかりである。あかりと明。名前もよく似ている。茉莉があかりに光を見たように、透も明に光を見た。

けれど、明は命を落とした。原因は、点字ブロックだった。自転車によって点字ブロックが塞がれ、それを避けようとして通行人とぶつかり、車道に倒れた。手から離れた白杖を掴む前に、事故が起きた。そして、明を轢いた運転手はその場を立ち去ったまま、きっと今も捕まっていない。透が「ブライトブラインド」という名を残したまま暴露系インフルエンサーに転向したのは、明を死に追いやったすべてのものへの怒りからだろう。

「点字ブロック増やしてとか、駐輪場ちゃんとしてとか、信号機は全部音を出してほしいとか、そういうのって結局政治でしょ?」

明はそう話していた。もしも点字ブロックに関する正しい知識がもっと社会全体に共有されていれば。もしも駐輪場がもっと拡充されていれば。あの事故は起きなかったかもしれない。流星の演説を聞きにきた支持者たちも、無遠慮に点字ブロックの上に立っていた。政治と、大衆の無関心が、悲劇を招いた。

透は、そういう社会を変えたかった。いや、わからない。もしかしたらそんなはっきりとした大義名分はなくて、でも「ブライトブラインド」のアカウントは消せなくて、行き場のない気持ちをぶつける矛先を探すために、ただ続けていただけかもしれない。

目が見えないから、明は命を落とした。でも目が見えない明だったから、仲良くなれた。あまりにも残酷すぎるジレンマに、それこそ神様なんていないんじゃないかと思ってしまった。でも、神様がいないからこそ、政治がちゃんと声を拾い上げていくべきなんだ。

透に出会う前の明もまた死にたがっていた

生前、明は星野鷹臣(坂東彌十郎)を支持していた。明の高校(おそらく盲学校)の入学式にやってきた鷹臣が「みなさんに不便のない世界を実現したい」と一席ぶったらしい。透と明のエピソードは2018年なので、それより前の話だ。

これまでの茉莉の話を踏まえると、鷹臣はかつては立場の弱い人に寄り添える政治家だった。実際、被災地に自ら炊き出しに出る場面もあった。おそらく明の高校に赴いたときの鷹臣の言葉は本心だったのだろう。それが、瑠璃(本上まなみ)の死を境に変わった。

亡くなった楢ノ木医科大学の新座値利との会談が行われたのは2021年。このあたりから闇堕ちしたと考えると、「不便のない世界」を目指した鷹臣に何があったのか。その真相追求もいよいよ近づいてきた。

明はあかりに似ていると書いたが、それは決して名前や善性の高いキャラクターだけではない。あかりは、かつて死のうとした過去があった。原因は、女子中学生の自殺未遂事件。今回、刺された透に対し、咄嗟のことだったにもかかわらず適切な処置を施していたことから考えて、あかりには何かしらの医療的バックボーンがある。次回予告を見る限り、養護教諭だったのではないだろうか。保健室に来た女子中学生をケアしていたが、何らかの行き違いにより彼女は自殺未遂に至り、あかりは強い希死念慮に襲われるようになった。

そして、透に出会う前の明もまた死にたがっていた。

「自殺したら、そうじゃなく死んだ人と同じ場所に行くの、すっげえ大変らしいよ」

明がそんな話をしたのは、つまり明自身が過去に自殺を考え、実際に自殺について調べたからだろう。明は決して強い人でも、すごい人でもなかった。自分の障害に対して、絶望感に打ちひしがれたこともあったのかもしれない。それが、透と出会って変わった。透と明は、茉莉とあかりであり、あかりと鴨井とし子(木野花)とも言える。

そう考えると別れ際に言った明の「透に会ってから毎日めちゃくちゃ楽しいわ」という言葉が余計に苦しい。あれは、命を救われた人の言葉だったのだ。

「ブライトブラインド」の挨拶は「はい。お待たせ」「待ってねえ」がお決まり。明がいなくなったあとも、透は「待ってねえ」までセルフ回収している。いつか透が自ら命を断つことなく最期まで走り切ることができたら、二人はまた再会できるだろうか。そのときは、きっと笑いながらこう言うに決まっている。「お待たせ」「待ってねえ」と。

(文・横川良明)

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タイトル 銀河の一票
放送日時 毎週月曜22時~フジテレビ系で放送※地上波放送後にFODでも配信
スタッフ 脚本:蛭田直美
音楽:坂東祐大
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧 悠輔
キャスト 黒木 華、野呂佳代、三浦透子、渡邊圭祐、倉 悠貴/
小雪、本上まなみ/
シシド・カフカ、岩谷健司、山口馬木也/
木野 花、岩松 了、坂東彌十郎、松下洸平
URL https://www.ktv.jp/ginganoippyou/(公式サイト)

(C)カンテレ/MYRIAGON STUDIO