【ネタバレ】『さよならノワール』第1話を考察!黒木の娘はもうすでに亡くなっている?

犯罪被害者支援室。それは、犯罪被害者や遺族らの心の傷をケアするために、事件発生直後から支援センターに引き継ぐまでの数日間をサポートする専門部署。『さよならノワール』は、この犯罪被害者支援室を舞台とした警察ヒューマンドラマだ。

火曜21時枠では広報課を舞台とした『東京P.D. 警視庁広報2係』など従来の警察ものでは登場することのなかった部署から事件を追う“刑事ドラマの解体と再構築”が行われてきた。その系譜に連なる本作は、どんな新しい感覚を視聴者に与えてくれるだろうか。

魅力は、単純な白黒では割り切れない人物造形

本作の大枠は、刑事ドラマのフォーマットである1話解決型によって構成されている。第1話は、夫と店を火事で失った小西さくら(北乃きい)がメインゲスト。店の経営が苦しく、そのせいで夫とも喧嘩がちだったさくらは、「死ね」と心ない言葉を浴びせたまま夫と死別した自責の念から、黒木夏海(小池栄子)、白石絵梨子(北香那)ら犯罪被害者支援室の面々にもやさぐれた態度をとる。そんなさくらの心の修復を通じて、犯罪被害者支援室とは「被害者にとって人生最悪の数日間のパートナー」であるという物語の基本理念を視聴者に理解してもらう構造となっていた。

この隙のない構成力は『きらきらひかる』から『緊急取調室』まで数々の事件ものを扱ってきたベテラン脚本家・井上由美子の手腕だろう。『きらきらひかる』も新人監察医の天野ひかる(深津絵里)が憧れの法医学者・杉裕里子(鈴木京香)から解剖とは「その人の最後の言葉を聞く」仕事だと学んでいた。そういえば、なんとなく黒木夏海のビジュアルは杉裕里子に似ている。

『さよならノワール』の独自性は、第1話を観る限り、そのキャラクターにある。まずインパクトがあるのは、白石絵梨子だ。こうした刑事もの、医療ものでは未熟な新人が時に暴走し、失敗しながら成長していくのが一つのスタンダードとなっている。

知識はあるが、コミュニケーション能力に欠け、悪意なく犯罪被害者を怒らせる白石もその典型に見えた。が、どうやらそう単純にはいかないらしい。白石が所属する帝都大学心理学部の教授・五十畑修(岡部たかし)との場面で、2年間の犯罪被害者支援室への派遣を終えたら、そこでの経験をもとに書籍を出すつもりだと欲深そうな笑みを浮かべる。ピュアゆえに暴走しがちな新人キャラなんてタマじゃない。どうやら白石は相当腹黒い野心家のようだ。

つまり「黒」と「白」というわかりやすい対比を名に冠しているが、実際はそんな鋳型にキャラクターを当てはめていないところが、このドラマの持ち味。それは、黒木夏海も同じだ。

現時点でわかっている黒木夏海の重大な情報は、かつて暴力団対策係の刑事であったこと。それが、1年前に新設された犯罪被害者支援室に異動となっており、その人事には上司の失踪事件が関連していること。そして離婚歴があり、娘がいることだ。

容疑者を逮捕し、自供させることが使命の刑事と、犯罪被害者の心のケアを最優先事項とする支援室は性質上対立しやすい。第一線の刑事だった黒木が、なぜ犯罪被害者の心に寄り添うという本来の刑事の職務とはかけ離れた現在の仕事にスムーズに移行できたのか。そこには、何かしらの背景があると見ていいだろう。

ヒントとなるのが、白石に「人生最悪の数日間」について尋ねられたときの黒木の答えだ。黒木は、離婚して娘に会えなくなったことと答えていた。また、ひとり自室で娘と思われる幼児の写真を見返していた。黒木にとって、娘との断絶は大きな心の傷となっていると見て間違いない。だが、女親である黒木が親権を奪われ、面会まで拒絶されているのには何か大きな理由があるはずだ。彼女は、一体何をしたのか。

そもそも黒木の娘が生存しているかどうかも定かではない気がする。犯罪によって大切な人を亡くした直後を「人生最悪の数日間」とするならば、黒木もまた娘を何らかの事件によって失っていると考えたほうが自然だ。大切な存在を突然の理不尽によって奪われた経験のある黒木だから、犯罪被害者の痛みを共有できるのだろうか。

何かしらの傷を背負っている黒木に、空気も読めない、人の心もわからない白石が関わっていくことで、どんな化学変化が起きるのか。本作の面白さは、そこにありそうだ。

鴨居のiPodは大切な人の忘れ形見か?

また、本作のもう一つ大きな見どころが、ずらりと並んだ個性派俳優陣だ。今最も勢いのある岡部たかしを筆頭に、荒川良々、眞島秀和、浅野和之、戸田恵子と手練れの俳優が勢揃い。若手も岡山天音、味方良介、濱尾ノリタカと味のある顔ぶれが揃っている。

現時点で最も注目なのは、やはり岡山演じる鴨居卓海か。黒木と白石が臨場したときも、鴨居の意味深なアップが何度かインサートされていた。また、セックス・ピストルズのデビューシングル「アナーキー・イン・ザ・U.K.」をiPodで聴いていたのも引っかかる。これは個人的な感覚かもしれないけれど、今日のドラマ描写としてiPodはかなり前時代的な気がする。つまり、もっとiPodが全盛期の頃に「アナーキー・イン・ザ・U.K.」を一緒に聴いていた誰かがいて、鴨居はその誰かとの思い出を引きずるように(あるいは忘れ形見として)iPodを使い続けているという説だ。

はたして鴨居の過去に犯罪被害者支援室はどう絡んでくるのか。このあたりも今後のドラマの大きな山場となるだろう。とりあえずこの岡山天音には昏い色気がある。危険だ。

(文・横川良明)

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『さよならノワール』第2話 あらすじ

黒木と白石が新たに担当することとなった事件は、不動産投資詐欺。被害者は、池袋のキャバクラ「マーメイド」で働く佐藤茂子(今泉佑唯)だ。源氏名は、美雨。常連客の野村健太(百名ヒロキ)から投資用にとマンションを勧められ、2800万円を騙し取られたと美雨は話す。さらに、鴨居らの捜査によると、事件の影には“トクリュウ”一派の存在が見られ、被害総額は1億5300万円にのぼるという。警察は、大元の犯罪グループを壊滅させるべく野村の尻尾を掴もうと試みるが、美雨は唯一の手がかりである野村とやりとりしたスマホの履歴をすべて消去したと言い……。

『さよならノワール』概要

タイトル 『さよならノワール』
放送日時 毎週火曜21時
スタッフ 脚本:井上由美子
主題歌:chilldspot「ドラマ」(RECA Records)
音楽:菊地成孔
プロデュース:狩野雄太
制作プロデューサー:清家優輝、岸川正史
衣装:伊賀大介
心理監修:石橋昭良
警察監修:石坂隆昌
演出:河毛俊作、清矢明子、柳沢凌介
制作協力:ファインエンターテイメント
制作著作:フジテレビ
キャスト 小池栄子、北 香那、岡山天音、荒川良々、味方良介、濱尾ノリタカ/
眞島秀和、戸田恵子、渡部篤郎 ほか
URL https://www.fujitv.co.jp/sayonaranoir-cx/(公式サイト)

『さよならノワール』(C)フジテレビ