【ネタバレ】9話のクライマックスが泣けた理由。『銀河の一票』が照らす投票の本質

なんだかまるでアイドルのデビュー日みたいだった。この日のために、周りのみんなが一生懸命準備をしてきて。本人は経験したことのないようなプレッシャーに襲われながら、精一杯期待に応えようとする。

演説のために階段を駆け上がる月岡あかり(野呂佳代)は、バックヤードからステージへと駆け抜けるアイドルさながらだった。

銀河の一票』第9話は、投票とは応援なのだと改めて気づかされた回だった。

「この人を応援したい」と本気で一票を投じたことはあるか

この第9話で、なぜか無性に泣けたシーンがあった。それは、告示日当日の風景。野原北斗(阿久津仁愛)がポスターの掲示場所を決めるくじ引きで、見事センターの4番を当て、仲間たちが大喜びで拍手する。選挙事務所でも、この日のために制作したバナーがいよいよお披露目となった。お揃いの黄色いジャンパーはなんだかクラスTシャツみたいで、もうとっくに忘れてしまった文化祭の日の胸の高鳴りが甦ってくるようだった。

この選挙のために集まったスタッフはみんなボランティア。だからと言って、別に生活に余裕がある人たちというわけじゃない。むしろ北斗がそうであるように、厳しい社会情勢にいっぱいいっぱいになっている人たちが大半だろう。樫田敦史(岩松了)らスナック「とし子」の常連客のように、さほど政治に関心がなかった人も少なくないはずだ。

それでも、いろんな雑事を押しのけて、力を貸してくれた。なぜか。答えは決まっている。あかりを応援したいと思ったからだ。あかりの人柄に、あかりの政治信条に惹かれて、この人の力になりたいと思った。その姿を見て、投票することは応援することなのだという当たり前の事実に気づかされたのだった。

選挙権を得て20数年。はたしてどれくらい毎回の選挙で「この人を応援したい」という候補者と出会ってきただろうか。どれくらい「この人を応援したい」という熱意を込めて一票を投じてきただろうか。残念ながら、そんな迸るような昂揚は一度も味わってこなかった。だから、あかりたちを見て、すごく羨ましいなと思ったのだ。

政治不信という言葉が至る所で使われている。選挙のたびに、「誰に投票したって同じ」というあきらめの言葉があちこちから聞こえてくる。僕自身、期日になってもはっきりとした投票先を決められず、ただ政治に参加しているというアリバイづくりのために漫然と投票所に行くことも、正直あった。

でも、『銀河の一票』を観ていたら、もっと本気で選挙に向き合いたいという気持ちが湧いてくる。なんとなく誰か、じゃない。この人がいいと心から思える候補者と出会えるだけで、選挙に、政治に、もっと本気になれる。そんな有権者の一人になりたいと思ったし、そんな候補者がもっと世に出てきてほしい。『銀河の一票』は心の中で足踏みしていた「変わりたい」という気持ちに「今がそのときだよ」と背中を叩くドラマだ。

無数の星々が吸い寄せられ一つの星団をつくるように、選挙は人と人が集まりチームとなる。そして、いくつもの星団が連なることで銀河が構成されるように、様々な考えや思想を持った集団によって社会が形成される。つまり社会とは、一人ひとりの意思の集合体だ。

僕が告示日のシーンを見て、つい泣いてしまったのは、そんな一人ひとりの意志が恒星のように輝いて見えたからだろう。もっとこんな社会になってほしい。そのために、この人に都知事になってもらいたい。一人ひとりの内から放たれる光が、客席でまたたくペンライトみたいに眩しくて、その美しさについ涙が出たのだ。

『銀河の一票』は、すべての登場人物にちゃんと人生がある

小さな星の一つひとつに、ちゃんとそれぞれの人生があるところも、このドラマの美点だ。今回は、樫田の過去が明かされた。実は元イベント会社社長で、コロナ禍によって会社をたたんだのだという。あの疫病によって受けた業績面での打撃は計り知れない。でも、樫田の気持ちがぺしゃんとなったのは、売り上げだけが理由ではないだろう。「不要不急」という言葉によって、あのとき、イベント業界は一様に自粛を迫られた。きっと樫田は政治から「切り捨てられた」気持ちになったんじゃないだろうか。見離された瞬間、立ち上がる気力が潰える。樫田の心を折ったのもまた政治なんだと思う。

そんな繊細な人物描写もありながら、味のあるキャラを出してくることにも抜かりない。鴨井とし子(木野花)のエピソードで印象を残した介護士の相良大樹(伊能昌幸)がここに来て再フィーチャー。ポスター貼りのボランティアをひと声で大量に集めるという謎の人脈を発揮したり、くじで好ポジションを引き当てた藤堂昴(倉悠貴)に真顔で交換を迫ったり、予想外の行動に周囲も視聴者も唖然とさせられっぱなし。集めたボランティアの面々が妙に威圧感のある人たちばかりなのも含めて、そのバックボーンが知りたいような、知らないままでいたほうが平和なような不思議な存在感を醸し出していた。

また、単に日山流星(松下洸平)の票を割るための対立候補に見えた風間藍生(梶裕貴)も、この人が都知事になったらもしかしたら東京は変わるかもしれないという期待感をにおわせはじめている。こうなってくると、いよいよ選挙の行方がわからなくなってきた。

そして、当の流星自身もまだ腹の底が読めない。今回は、大切な告示日に星野瑠璃(本上まなみ)の墓参りに訪れるシーンが描写されていた。爽やかな笑顔の裏にしたたかな野心を忍ばせる流星だが、単に計算高い狐でもないようだ。物語の発端となった新座値利学部長の転落死に関する告発についても、同様の手紙が星野鷹臣(坂東彌十郎)が密会場所として用いている「マリヴロン」の店主(トムキラン)のもとにも届いていることがわかった。

はたしてあの手紙の差出人は誰なのか。いよいよ物語は佳境を迎えようとしている。

(文・横川良明)

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国内ドラマ『銀河の一票』メインビジュアル

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『銀河の一票』第10話 あらすじ

人気声優・白鳥光留(日髙のり子)がウグイス嬢を務めるという話題性も手伝って、“チームあかり”は順調に注目を集めていた。しかし、新座値利学部長の転落死に関する告発の手紙をめぐり、不穏な気配が。五十嵐隼人(岩谷健司)が雨宮楓(三浦透子)に対し、この告発についてこれ以上調査を進めるなと釘を刺したのだという。五十嵐は一体何を知っているのか。忠告の真意について星野茉莉(黒木華)が尋ねると、五十嵐から意外な提案を持ちかけられる。

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タイトル 銀河の一票
放送日時 毎週月曜22時~フジテレビ系で放送※地上波放送後にFODでも配信
スタッフ 脚本:蛭田直美
音楽:坂東祐大
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧 悠輔
キャスト 黒木 華、野呂佳代、三浦透子、渡邊圭祐、倉 悠貴/
小雪、本上まなみ/
シシド・カフカ、岩谷健司、山口馬木也/
木野 花、岩松 了、坂東彌十郎、松下洸平
URL https://www.ktv.jp/ginganoippyou/(公式サイト)

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