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【ネタバレ】最後の最後まで松田元太はメロかった。『人事の人見』の人見廉はみんなの心の同僚だ

(C)フジテレビ

人事の人見』(フジテレビ系)がフィナーレを迎えた。最後は社長総選挙。なんとも人見(松田元太)らしい型破りなアイデアだが、その先にはさらに人見らしい展開が待っていた。

共生社会に必要なもののすべてが会社にある

いい最終回とは、登場人物たちの行動や選択を見て、どれだけ「らしいな」と思えるかだと思う。そういう意味では、『人事の人見』はたくさんの「らしさ」がつまった最終回だった。

仰天の人事により、社長に就任した人見。ところが、着任早々、退任を宣言。後任を総選挙で決めると発表する。にもかかわらず、肝心の総選挙当日、人見の姿は見えない。なぜなら、会社に行けなくなってしまった新入社員・茅原(杏花)の話を聞いていたから。

この時点で人見らしいし、総選挙が終わるまでに人見を探し出そうとする真野(前田敦子)たち人事部のアタフタ感もなんとも人事部らしい。思えば、ずっとよくわからないことをしでかす人見に振り回されながら、人事部はみんな東奔西走していた。

プログラムに書いてあることを全部やらないと総選挙は無効だと言って聞かない総務部長の石郡(中田顕史郎)の杓子定規っぷりもなんだか懐かしかったし、茅原が思いついたコーヒー豆のゴミから鉛筆をつくるアイデアを形にするために、これまで登場した社員たちの知恵を借りるところなんか、ちょっと胸が熱くなるくらいだった。

この流れがやりたくて、今までのゲストキャラはみんな違う部署だったのかと膝を打ったし、マーケティング部の瀬沼(田中洸希)も、商品企画部の植木(珠城りょう)も、研究開発部の土橋(山口まゆ)も、営業部の清川(ドリアン・ロロブリジーダ)も、みんな楽しそうに働いているのがうれしかった。持田(阿南健治)に関しては、意見を求められても「ぜひ削ってみたいですね!」しか言えてなくて、相変わらず仕事ができなさそうな感じがもはや可愛い。このあたりは、まるで舞台のカーテンコールを見ているような幸福感があった。

何より挨拶代わりに会場で流された、茅原に向けた人見の言葉が良かった。

会社で働くとはどういうことか。年齢も経験も違う人たちが一緒になって働く喜び。多様性という言葉が広まって久しいけど、まさに会社こそが人種のサラダボウル。いろんな人がそれぞれのアイデンティティを認め合いながら、個性を生かして力を発揮する。共生社会に必要なもののすべてが会社にあるのだと改めて気づかされた。

今時、会社なんてネガティブな文脈で語られることのほうが多い。検索窓に「会社」と入れたら真っ先に「会社 辞めたい」が出る時代だ。朝起きたら「会社行きたくない」。会社に着いたら「早く帰りたい」。何かあると保健室に駆け込むみたいに転職サイトを見てしまう。

でも、「好き」とは言えなくても「悪くない」と思えたら、何かが変わるのだろうか。うんざり顔を隠すように下を向くんじゃなく、目の前の人にぶつかってみれば、いつか心が通じる瞬間がやってくるのだろうか。ちょっとだけ会社とそこで働く人たちを信じてみたくなる。『人事の人見』は、そんなドラマだった。
 

「人事の人見」もいいけど、「彼氏の人見」もお願いします

それにしても、人見は最後の最後までメロかった。「なんかあった? 俺で良かったら愚痴とか聞くよ」の言い方が100点満点中300点。会社から帰って家に人見くんがいたら、毎日コージーコーナーでケーキでも買って帰るわ。

とにかく人見くん、人の話を聞くスキルがぶち抜けてる。茅原の悩みに対しても「正直わかんない」と言った上で、「でも、辛そうっていうのはわかるよ」と寄り添う。無駄に「わかるよ〜」なんて言ってくる男は一切信用ならないけど、ちゃんと「わからない」と本人の痛みを尊重した上で、気持ちをすくい上げてくれるところが彼氏の見本すぎて、中学あたりの必修科目に松田元太の人見くんを入れてほしい。

「人事の人見」も「社長の人見」もいいけど、私たちがほしいのは「彼氏の人見」です。

正直、茅原の自己肯定感が低すぎて、途中からただの面倒くさい激重彼女みたいになっていたけど、放り出さずに最後まで付き合ってくれる人見くん、完全にメンヘラホイホイ。ChatGPTよりちゃんと話を聞いてくれる唯一の人類が人見廉です。

しかし、そんな人見も日の出鉛筆を離れ、新天地へ。最後に手紙を渡そうとして、だけど自ら身を引いて真野にキラーパスを送る森谷ちゃん(桜井日奈子)、健気すぎてオタクの鑑。いいんだよ、森谷ちゃんは森谷ちゃんできちんとお別れをすませたら! 真野を呼びに行くのなんて須永(新納慎也)あたりにやらせときゃいいんだから!!

そして、森谷ちゃんの心意気を受け、真野が人見のもとへ走り出す。ここで「好き」とか告白したら微妙に萎えるわ〜と思っていたので、最後の言葉が「社員証つけっぱなし」なのも実に「らしかった」。こんなに「らしさ」を感じられるのは、11話をかけてそれぞれのキャラクターの魅力がちゃんと視聴者に伝わったからだと思う。

もう人見くんには会えないけど、この同じ空の下で人見くんが誰か困っている人の話を聞いているのかと思うと、私も私の持ち場で頑張ろうと背筋が伸びる。人見廉は、みんなの心の同僚なのだ。

(文・横川良明)

◇ドラマ『人事の人見』概要

タイトル 人事の人見
配信 FODで全話配信中!
出演者 松田元太/前田敦子/桜井日奈子/新納慎也/
ヘイテツ/松本まりか/小野武彦/
鈴木保奈美/小日向文世
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