青春の思い出は、すべて改竄された記憶だった…? 新ドラマ『ラムネモンキー』は古沢良太の十八番

『リーガル・ハイ』『デート〜恋とはどんなものかしら〜』『コンフィデンスマンJP』など、心沸き立つ傑作ドラマを生んできた古沢良太。業界屈指のビッグネームが、民放の連ドラでは実に8年ぶりとなる新作を書き下ろした。それが、『ラムネモンキー』だ。

すっかりくたびれたおじさんとなった現代と、夢いっぱいの中学時代を過ごした1988年。二つの時代を交差しながら掘り起こすのは、記憶の奥底に埋もれた不可解な謎。何が本当で、何が嘘か? 古沢良太流青春ミステリーが今始まった。

ただの懐古主義と甘く見ていたら、あなたもきっと騙される

古沢良太の名を広く世間に轟かせるきっかけとなったのは、やはり映画『キサラギ』だろう。自殺したB級アイドルの死の真相を解明するオタクたち。ハイテンポな密室会話劇と、二転三転するストーリテリングは、その後の作品にも共通する、まさに古沢良太の真髄だ。

『ラムネモンキー』の第1話を観終えて、そんな古沢ワールドが久々に帰ってきたことがうれしかった。

中学の同級生だった“ユン”こと吉井雄太(反町隆史)、“チェン”こと藤巻肇(大森南朋)、“キンポー”こと菊原紀介(津田健次郎)の3人は、キンポーの呼びかけにより37年ぶりに再会する。

ガンダム、ひょうきん族、マイケル・ジャクソン、『竹取物語』の沢口靖子、光化学スモッグ。飛び出る懐かしワードの数々。推し活ブームにより今や時代の主役となったオタクは、当時は暗い日陰者。逆に令和では絶滅危惧種となりつつあるヤンキーが、当時はリーゼント頭でこの世の春を謳歌し、肩パッドの入ったダボダボのスーツに、竹刀を振りかざすジャージ姿の教師が我が物顔で跋扈する。まさに“異世界”というべき光景を次々と見せていくことで、これは『不適切にもほどがある!』『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』に続く、人気作家による昭和懐古ドラマなのだと視聴者はタカを括る。

だが、それこそが天才コンフィデンスマン(詐欺師)のテクニックだった。

3人が立ち上げた映画研究会。その顧問となった“マチルダ”こと宮下未散(木竜麻生)に関する記憶がどうにも怪しい。恩師はどこへ消えたのか。思い出の糸をたぐり寄せるうちに、自分たちの少年時代が捏造された記憶とすり替わっていることに気づく。

真実を知るため、身元不明の人骨が見つかった工事現場に乗り込む。雨に打たれながら、それでもシャベルを土に差し込む。それはまさに自らの記憶を掘り起こすというメタファーだ。

地中から掘り出されたのは、かつてマチルダが持っていたマジンガーZのボールペン。やっぱりあの人骨にマチルダは関わっていたのだ。どうして自分たちは偽りの記憶を本当の出来事だと思い込んでいたのか。ただの中年世代に向けたノスタルジーでは終わらない。『ラムネモンキー』の正体は、考察要素たっぷりの記憶改竄系ミステリーだった。

ちりばめられた謎の数々。その真相を見破れるか

これから暴かれていく真相は、第一にマチルダの消息だろう。あの白骨遺体は、本当にマチルダのものなのか。あるいは、別の誰かなのか。当時、3人が暮らす丹辺市は、化学工場の移転と、それに伴う街の再開発で揺れていた。当然、ビッグマネーが動いている。マチルダがそれに何かしらの形で関わっていて、しかも決して表に出てはいけない何かを知っていたなら、突然消されてしまっても不思議ではない。

次に3人が今持っている記憶のどこまでが真実で、どこからがフェイクなのかも気になる。どうやら3人が大盛況をおさめたと記憶している上映会は中止に終わっていたらしい。もしそれが本当の記憶なら、中止に至った原因がマチルダに関わっている可能性がある。

そもそもどうして3人揃って、すっかり別の記憶を植えつけられていたのかも謎だ。そんな魔法のような芸当ができるのか。可能だとしたら、よほど封印してしまいたいような悲しい出来事に3人は遭遇してしまったとも考えられる。今、3人が封を開けようとしている過去は、パンドラの箱なのかもしれない。

謎が眠っているのは、過去だけではない。勝ち組人生を歩んでいたユンをどん底へと叩き落とした贈賄事件も裏で誰かが糸を引いている臭いがプンプンする。疑わしいのは、兄・健人(松村雄基)か。あるいは、大物代議士の加賀見六郎(高田純次)か。誰かがユンをハメようとしているならば、そこには何か目的があるはずだ。この贈賄事件が1988年の真相と実はつながっているというサプライズも、古沢良太なら十分に考えられる。

そして最大の謎は、3人が再び集まるきっかけをつくったキンポーだ。工事現場で見つかった人骨をマチルダと結びつけたのは、家の中で見つけたマチルダの消息を探すビラだった。

ではなぜそんな古いビラが出てきたのか。キンポーは家の中を片づけていたと話していたけど、つまり何かしら身の回りを整理する必要があったということだ。冒頭でキンポーは放射線室で何かしらの検査を受けていた。おそらく何らかの命にかかわる病気と診断された、ないしその気配を感じ取っているのだろう。家族は認知症を患う老齢の母・祥子(高橋惠子)だけ。自分が元気なうちに、身辺整理をしておきたいと考えるのは自然な流れだ。

自分から声をかけておきながら、いきなりユンやチェンに「そうやって上から見下すために、僕に会いにきたんだろう」と食ってかかったのも、余命いくばくもないという身の上を考えれば理解できる。それぞれ人生につまずき気味の3人だけど、いちばん崖っぷちにいるのは、キンポーなのかもしれない。

でも、少年時代からの夢を叶えることはなくても、世間の脚光を浴びることはなくても、「さもしい一般人」なんてことはない。ユンとチェンと再会し、本当の記憶を思い出していく中で、キンポーは青春の輝きを取り戻し、自分の人生を肯定できるか。

『ラムネモンキー』は青春ミステリーであると同時に、自分だけの人生を胸を張って愛し抜くための賛歌と言えそうだ。

(文・横川良明)

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ドラマ『ラムネモンキー』第2話あらすじ

現場から見つかったボールペンを持って、ユンたちは警察に調査を願い出るが、鶴見巡査(濱尾ノリタカ)は家族からの捜索届がなければ対応できないと取り付く島もない。怒ったユンは自分たちの力で真相を調べようと意気込み、早速、チェンは荷物の中から映研時代のビデオテープを引っ張り出してくるが、「No.12」のビデオテープだけないことに気づく。一方、キンポーはマチルダの住んでいた地域を調べてみるが、空振りに終わる。当時の記憶が曖昧な3人に、西野白馬(福本莉子)は「最初から思い出すしかないんじゃないですか、みなさんの物語を、一番最初から」とアドバイスするが……。

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“古沢良太マジック”を体感!『ラムネモンキー』と合わせて観たい神脚本傑作選
タイトル ラムネモンキー
放送日時 毎週水曜22時からフジテレビ系で放送
FODでは地上波放送後に次回放送分をプレミアム先行配信
スタッフ 原作:古沢良太『ラムネモンキー1988』(note刊)
プロデュース:成河広明(フジテレビ)
プロデューサー:栗原彩乃(フジテレビ)、古郡真也(FILM)
演出:森脇智延
キャスト 反町隆史/大森南朋/津田健次郎/木竜麻生/福本莉子/濱尾ノリタカ/大角英夫/青木奏/内田煌音 ほか
URL https://www.fujitv.co.jp/ramunemonkey88/(公式サイト)
https://fod.fujitv.co.jp/title/80xj(FOD配信ページ)

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