【ネタバレ】今期ドラマの隠れ名作!『ラムネモンキー』がじわじわと支持を広げる理由

「勝ち組」「負け組」という言葉がやたらと使われるようになったのは、いつからだろうか。
 
個人的な感覚では、2000年代に入ってから。バブルが崩壊し、「失われた10年」なるフレーズが広まり、この国に明るい未来はどうやらないらしいという絶望が空気のように浸透しはじめた頃、まるで嫉妬と対立を煽るように「勝ち組」「負け組」なんてラベルで人を区分けするようになった。
 
ラムネモンキー』第5話は、そんな「勝ち組」と「負け組」の話。そして、そこにこの物語が愛される理由がつまっていた。

『ラムネモンキー』は、名もなき人々のためのドラマだ

この物語の主人公・“ユン”こと吉井雄太(反町隆史)、“チェン”こと藤巻肇(大森南朋)、“キンポー”こと菊原紀介(津田健次郎)の現状は、きっと他人から見たら「負け組」なんだろう。そして、今回登場した蛭田哲夫(生瀬勝久)はどう見たって「勝ち組」だ。
 
世の中には、時流を読むのが天才的にうまい人がいる。蛭田もその一人だ。レンタルビデオ産業の将来性に目をつけ、アダルトショップから業態転換。FC化を推進し、チェーン展開を成功させた。別に映画が好きだったわけじゃない。むしろ思い入れが特にないから、企業価値が最大化したタイミングであっさり売却。今やってるのは会員制サロンの運営というところも、世渡りのうまさと要領の良さが感じられる。
 
SNSを開いても、蛭田みたいな人はたくさんいる。「たった3ヶ月で月収300万達成!」「知らないと損する評価経済社会の生き残り術」なんて扇動的なコピーで人の欲望をくすぐり、ピラミッドの土台となる“信者”をかき集める。人は不安に弱い生き物だ。自分の選択は間違っているんじゃないかと常に心許ないし、自分だけが損をしていたらどうしようとビクビクしている。
 
だから、蛭田は足元を突いてくる。「そういう内向きなところが日本人のダメなところ!」と相手を否定し、「どんどん世界から置いてかれるぞ」と不安を煽る。蛭田の言ってることは、間違ってはいないんだろう。確かに給与には不満しかないし、税金は高すぎるし、年金なんてもはや何の期待も抱いていない。僕たちの生きるこの国は、沈みゆく国なのかもしれない。搾取されていることに気づいて、早くその構造から抜け出すんだという蛭田の演説は至極ごもっともだ。
 
でも、なぜだろう。自分たちで自分たちの現状を憂いたり、国に文句を言うのは許せる。だけど、人から言われると無性に腹が立つ。それでもこっちは一生懸命やってるんだよと反論したくなる。
 
世の中の多くは「負け組」なのかもしれない。他人から見れば、パッとしない人生かもしれない。でも、誰も手を抜いているわけじゃない。頑張ってやってきたことが報われなかったり、裏目に出たり、空回りに終わったり。「負け組」のレースにも、プライドとドラマがあるのだ。
 
それを全部なかったもののようにして、バカになんかされたくない。要領良く立ち回るために、人は生きているわけじゃないのだ。西野白馬(福本莉子)やユンの怒りは、この作品を観ているすべての人たちの代弁者だった。
 
『ラムネモンキー』が回を重ねるごとにじわじわと支持を広げている理由は、こういうところなんだろう。このドラマが目を向けているのは、名もなき人々だ。
 
仕事で失敗した人。夢がうまくいかなかった人。コンプレックスを抱えている人。好きなこともやりたいこともまだよくわからない人。そういう人たちを、このドラマは肯定し続ける。何にもなれなくても、何をやってもうまくいかなくても、ただ真面目に生きている、それだけで素晴らしいんだと肩を抱いてくれる。
 
今までやってきたことのすべてが、自分だけのいとおしい人生なのだという気持ちにさせてくれるから、僕たちは水曜の夜、『ラムネモンキー』の時間が来るのが待ち遠しくなっているんだと思う。
 

ツダケンにダッフルコート着せた衣裳さんに拍手したい

そこにプラスして、古沢良太のクスッと笑える台詞術がちりばめられているから、ユンたちの抱える現実はそこそこハードだけど、暗い気持ちにならずに楽しめる。
 
今回で言えば、バンコクの豪邸で暮らしているという蛭田に会いに行こうとして、「被告人って勝手に海外行っていいんですか」と白馬に指摘され、「俺が高飛びになってしまう」と自滅するユンが面白かった。
 
「88年はエロと日常が分け隔てなく共存していたんだな」と回想するチェンに対する、「嫌なダイバーシティ」という白馬のツッコミもいいし、「これ何ハラ?」への「シンプルセクハラです」の返しも良かった。
 
謎解きミステリーの要素もありつつ、基本は、ガンダーラ珈琲を舞台とした会話劇。軽妙なやりとりを見ているうちに、自然とユンたちに親しみを持てるようになっている構造が、このドラマの愛され力のベースになっている。
 
でこぼこだらけの人生に何度も足をとられつつ、それでも人生への誇りを取り戻しつつあるユンたち。でも、ユンの離婚問題も、キンポーの介護問題もそう易々と解決するものではない。気持ちだけではどうにもならないハードモードな人生後半戦を、ユンたちはどう生きるのか。
 
その答えはきっと、今、彼らと同世代の、そしていつか彼らと同世代になる人々へのエールとなるはずだ。
 
追伸、それはそれとしてツダケンのダッフルコート可愛すぎんか??
 
(文・横川良明)

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ドラマ『ラムネモンキー』第6話あらすじ

チェンが、映研時代の映像に不審な人物が映っていることを発見する。男は、近所の化学工場の従業員。その強さと見た目から、ユンたちは彼を「ランボー」と呼んでいた。映画のロケハンのために化学工場に忍び込んだ際、ランボーに見つかり追いかけられたこと。“マチルダ”こと宮下未散(木竜麻生)のアパートに空き巣が入ったときも、現場でランボーを見かけたこと。当時の記憶を思い出せば思い出すほど、ランボーへの疑念が深まっていく。
一方、チェンは小野寺さつき(中越典子)から新しい仕事を持ちかけられる。しかし、それは建設会社の会長が自費出版した自伝をポケットマネーで映画化するという、クリエイターにとってはやりがいのかけらもない仕事で……。

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青春の思い出は、すべて改竄された記憶だった……? 新ドラマ『ラムネモンキー』は古沢良太の十八番
タイトル ラムネモンキー
放送日時 毎週水曜22時からフジテレビ系で放送
FODでは地上波放送後に次回放送分をプレミアム先行配信
スタッフ 原作:古沢良太『ラムネモンキー1988』(note刊)
プロデュース:成河広明(フジテレビ)
プロデューサー:栗原彩乃(フジテレビ)、古郡真也(FILM)
演出:森脇智延
キャスト 反町隆史/大森南朋/津田健次郎/木竜麻生/福本莉子/濱尾ノリタカ/大角英夫/青木奏/内田煌音 ほか
URL https://www.fujitv.co.jp/ramunemonkey88/(公式サイト)
https://fod.fujitv.co.jp/title/80xj(FOD配信ページ)

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