【ネタバレ】『銀河の一票』はなぜ面白いのか?心を突き動かす名台詞の数々をフィーチャー!

ドラマファンからの圧倒的な支持で春ドラマをリードする『銀河の一票』。なぜ『銀河の一票』にこんなにも心を突き動かされるのか。第2話で飛び出した様々な名台詞をもとに、『銀河の一票』の面白さの根源にあるものを分析する。

生きる理由なんて「念のため」で十分だ

『銀河の一票』は言葉を信じている。言葉は、コミュニケーションの背骨だ。相手とわかり合うために、気持ちを届けるために、人は言葉を尽くす。言葉に対して誠実な人は、きっと人に対しても誠実だ。ドラマもそう。言葉に誠実なドラマは、視聴者にも誠実に向き合っている。
 
ハッとさせられる言葉がたくさんあった第2話。いくつか例を挙げてみよう。たとえば、もう嘘をつきたくないと言った星野茉莉(黒木華)がその後に続けた台詞。
 
「正しいことをする権利は、正しいとは思えないことを積み重ねた先でしか得られない」
 
それが、魑魅魍魎の永田町で身につけた茉莉の処世術だった。自分のやっていることに自分で失望しながら、茉莉はその先にある都知事の夢のために必死で取り繕っていた。でも、違和感はコップの水のように溜まっていく。「あなたが殺した」という告発文は、コップの水が溢れかえる最後の一滴だった。だからもう、茉莉は正しいことだけをしようと決めた。
 
「わからなくて」「何のために生きてるのか」と途方に暮れる月岡あかり(野呂佳代)への鴨井とし子(木野花)の「念のため」という答えもたまらなくよかった。これまでいろんなフィクションで「何のために生きるのか」という問いは繰り返されてきた。そのたびに「自分のため」とか「愛する人のため」とか、もっともらしい解が提示されてきたけれど、なんだかどれもしっくりこなかった。
 
でも、「念のため」と言うとし子に、ああ、そんなことでいいんだよなと初めて腹に落ちた。大義名分なんてなくていい。もしかしたらこの先いいことがあるかもしれないから。そのときに死んじゃってたらもったいないから、念のために生きる。なんてテキトー。でもちゃんとしたたか。生きる理由なんて、そんな程度のもので十分なのだ。
 
人はこういう大きなテーマに対し、つい眉根を寄せて、いかにも大層な御託を並べがち。だからこそ、「念のため」というあっけらかんとした答えが刺さったし、「念のため」の裏側に見えるとし子の甘くてしょっぱい人生が滋味深かった。
 
自分よりもっと人の上に立つのにふさわしい人間がいるからと出馬を固辞するあかりに対し、茉莉が言った「上じゃなくて、前です」という台詞も示唆に富んでいた。僕たちはいつの間に行政のトップに立つ人間を「人の上に立っている」と認識するようになったのだろう。そう考えた時点で、社会というものはピラミッドみたいに上下の階層があると無意識に思い込んでいる。そして、自分たちのことを下だとすっかりわきまえるようになっている。
 
でも茉莉の言う通り「上」じゃない。本当は「前」なんだ。後ろに続く人たちの先頭に立ち、道を整備し、目的地へとナビゲートする。大衆が追いかけたいと思う背中であり、人々を鼓舞する旗振り役。本来、政治家とはそういう人物だったのだろう。1話で茉莉は「偉い人じゃないです、政治家は。単なる代表です、私たちの」と涙を流したが、この「前」という言葉に茉莉のあるべきリーダー像が集約されていた。
 
そして、そうやって理想論を並べ立てることを「綺麗事」と恥じた茉莉に、「綺麗事じゃないよ。綺麗なことだよ」とあかりが言う。これも一見すると言葉遊びのようだ。でも私たちがつい鼻つまみ者のように忌避してしまう「綺麗事」という言葉を分解し直すことで、本質を浮き彫りにしてくれた。
 
綺麗なことを信じて何が悪い。綺麗なことをやろうとする人を、なぜ疎ましく思う必要がある。むしろ信じさせてほしい、綺麗なことを。「正しいことをする権利は、正しいとは思えないことを積み重ねた先でしか得られない」なんて悲しい言葉をわかったような顔して言うことが大人になることだとしたら、そんなのあまりにも虚しすぎる。もっと理想を追いかけさせてほしい。しぶとく最善を貫かせてほしい。そんな社会のほうが絶対に希望がある。
 
たった一つの言葉で、がらりと世界の見え方が変わるような力が、『銀河の一票』にある。だから、『銀河の一票』を観ていると、まるで名作小説のページをめくるような感動がある。脚本・蛭田直美が心を尽くした言葉の数々に、僕たちはエンパワーされているのだ。
 

日山流星は計算か?それともただの天然か?

と同時に、政治もまた言葉が背骨だ。言葉一つで、簡単に国民を動かすことができるし、手のひらの上で踊らせることもできる。だから、言葉のうまい政治家は時に疑わなければいけない。
 
大衆人気を集める日山流星(松下洸平)は、地元の市民に向けて「私は町田の星ではありません。あなたの星です」と微笑みかけた。なんと薄っぺらい言葉だろう。中身なんて何もない。ただキャッチーなだけ。でも、そういうわかりやすい言葉に人は弱いし、耳心地のいい言葉を並べていれば、国民はほいほいとおだててくれる。それをよくわかっているから、流星も息を吐くように空虚な言葉を量産する。
 
今のところ、この日山流星という男の全貌はまだ掴めない。てっきり『エルピス-希望、あるいは災い-』の斎藤正一(鈴木亮平)のように清濁併せ呑んだふてぶてしさが色気になるキャラクターかと思っていたけれど、それよりもかなり軽薄に見える。気球のくだりなんて、サンルーフを開けたのが天然なのか皮肉なのか、ちょっとわからなかった。もしや本当にただの空っぽな男なのだろうか。そして、何が恐ろしいかというと、今の政界には流星のように胡散臭い人たちが山ほどいるということだ。
 
キャラクターの意外性という意味では、茉莉も思った以上に浮世離れしたところがありそうだった。あのやりとりで不動産の審査に落ちると思っていなかったところは、やはり世間知らずのお嬢様なのか、あるいは純真すぎるのか。いきなり遠い目をしたかと思えば、「すいません、消えてる場合じゃない」と我に返るところなんて、かなりマイペースだ。「消えてたんだ」というあかりの返し含め、常識人のあかりと調子っぱずれな茉莉の掛け合いは、期待以上の面白さがある。
 
そして、人の心を照らす明るさを持ったあかりには、やはり暗い過去があった。すれ違う女子中学生に目をやる彼女の脳裏によぎったのは、「実録ルポ 女子中学生自殺未遂」という雑誌の見出し。あかりが一度手を離してしまった相手というのは、この女子中学生なのだろうか。ということは、年齢的に考えるとあかりはこの生徒の教師だったのかもしれない。
 
いずれにせよあかりの過去は、都知事選を戦う上で大きな脛の疵(きず)となりそうだ。おっと、もうすっかりあかりが出馬する前提で書いてしまいましたね。あ、イメトレです。

(文・横川良明)

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『銀河の一票』第3話 あらすじ

とし子の成年後見人を務める弁護士の竹林圭吾(中山求一郎)は、とし子の住居と店舗を売却すると、あかりに告げる。とし子の介護費はもはやとし子の年金だけではまかなえず、スナックの売り上げから補填していたが、客足の低迷により店舗の経営も火の車。このままでは近い将来、経営が破綻するのは火を見るより明らかだと判断した竹林は、不動産を処分することで資金を確保しようと考えたのだ。お店を潰したくないあかりは、なんとか存続の道を探るが、それには最低でも約1000万円の資金が必要で……。

『銀河の一票』の見逃し配信はFODで!

タイトル 銀河の一票
放送日時 毎週月曜22時~フジテレビ系で放送※地上波放送後にFODでも配信
スタッフ 脚本:蛭田直美
音楽:坂東祐大
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧 悠輔
キャスト 黒木 華、野呂佳代、三浦透子、渡邊圭祐、倉 悠貴/
小雪、本上まなみ/
シシド・カフカ、岩谷健司、山口馬木也/
木野 花、岩松 了、坂東彌十郎、松下洸平
URL https://www.ktv.jp/ginganoippyou/(公式サイト)