【F1™︎ 2026】苦戦するアストンマーティンとホンダ、未来への希望は?

F1 【F1™︎ 2026】苦戦するアストンマーティンとホンダ、未来への希望は?
「F1™︎ 世界選手権」の2026年シーズンは大きなレギュレーションの変更があり、新時代のマシンでの闘いとなっています。「メルセデス」が独走し、「フェラーリ」「マクラーレン」がそれに続く戦力構図が序盤の3戦で見えてきましたが、一方でホンダのパワーユニット搭載で期待されていた「アストンマーティン」は予想外の苦戦を強いられています。中東情勢の不安定化で1ヶ月のお休みが設けられた中で、「アストンマーティン」の復活はあるのでしょうか?

まさかの大苦戦のアストンマーティン・ホンダ

F1™︎ では新規定導入に勢力図の変化が起こるのはいつものことです。過去を振り返っても、1998年にコーナリングスピード抑制のためにグルーブドタイヤ(溝つきタイヤ)が導入された年は前年王者のウィリアムズやベネトンが低迷し、マクラーレンが躍進。2006年の2.4L・V8エンジン導入時にはメルセデスエンジンを搭載したマクラーレンが前年にシーズン10勝を挙げたにも関わらず、1勝もできずに終わりました。また、2014年のハイブリッド化(パワーユニット)の年にはメルセデスが独走状態になり、それまで王国を築き上げていたレッドブルはセバスチャン・ベッテルが1勝もできずにシーズンを終えました(レッドブルはリカルドが3勝)。

ただ、これまでも勢力図の変化はあったものの、トップチームはトップの座から大きく陥落するケースは少なく、昨年までチャンピオン争いをしていたホンダのパワーユニットがここまで低迷するとは誰も予想していなかったことでした。

ただ、今季の「アストンマーティン・ホンダ」はシーズン開幕前のテストから新車の完成に遅れが生じていた時点で、その遅れを取り戻すことが簡単ではないことは明白でした。グランプリシーズンが一度スタートしてしまうと、レースに注力しなくてはいけなくなるので、今回のお休み期間は彼らにとっては良いリスタートを切るための期間となると考えられます。

希望がみえた日本グランプリでの完走

ウィリアムズ、マクラーレン、レッドブルを躍進へと導いた「空力の奇才」と呼ばれるエイドリアン・ニューウェイがチーム代表を務める今季の「アストンマーティン」。そこにホンダがパワーユニットを供給するというチーム体制には大きな期待が寄せられていました。

「アストンマーティン」は2021年にレーシング・ポイントから改称する形で誕生しました。それ以前はフォース・インディア、スパイカー、ジョーダンというチーム名で1991年から35年ほどの歴史があります。アストンマーティンに変わってからはセバスチャン・ベッテルやフェルナンド・アロンソらのチャンピオン経験者が表彰台に乗っており、時折トップチームのような活躍を見せてはいますが、優勝はレーシング・ポイント時代の1勝(セルジオ・ペレス)と遙か昔のジョーダン時代の4勝のみで、年間コンストラクターズランキングトップ3に入った年はジョーダン時代まで遡らないといけません。つまり、バリバリのトップチームではなく、中堅チームとして歴史を重ねてきたチームなのです。

オーナーのローレンス・ストロールが資金を投入し、アロンソを獲得し、ニューウェイが加わるという夢のようなチーム体制ができ、さらにホンダがパワーユニットを独占供給するというのが今季の体制です。

一方でホンダは近年、レッドブルとのパートナーシップで成功をおさめてきましたが、本田技研工業としては2021年でF1™︎ から撤退を宣言。その後は子会社であるHRC(ホンダレーシングコーポレーション)がパワーユニットの製造、開発、運用を担ってきました。実際にはコロナ禍の影響とホンダの撤退宣言を受けて2022年から2025年までF1エンジンは開発が凍結されていましたから、HRCが参戦を継続させてきました。ホンダとしては継続して参戦しているように見えるのですが、日々の開発業務という意味では2026年に向けて新たなチャレンジをしなくてはいけなかったということです。

近年、密接な関わりがなかった両者がタッグを組むことになったのですが、そのスタートは連携がうまくいきませんでした。しかし、両者はすぐに改善できないかもしれませんが、それぞれの立場でブラッシュアップを続けているのが現状です。

そんな中、鈴鹿で行われた日本グランプリではフェルナンド・アロンソが初めてフルレースを完走。開幕戦オーストラリアでは完走することすら難しいという状況にあったことを考えればポジティブなことだったといえます。

【F1™︎ 2026】苦戦するアストンマーティンとホンダ、未来への希望は?

救済措置ADUOの発動が浮上の鍵となるか?

今季のF1™︎ で新しく作られたパワーユニットは3月1日時点でFIA(国際自動車連盟)に設計が提出され、ホモロゲーション(登録)が行われており、そこから基本的には手を加えることはできません。つまり3月1日以降は設計を大幅に変えることはできないのです。

しかしながら、FIAは今季、ADUO(Additional Development Upgrade Opportunities)という制度を設定しています。日本語に訳すと「追加開発アップグレード機会」となり、著しく遅れをとっているメーカーに対して追加の開発、パーツのアップグレードなどを許可する制度です。いわゆる救済措置といえるもので、6戦ごとのグランプリでFIAが平均出力を測定し、最高の出力を出しているメーカーから2%から4%以上劣っているメーカーは救済を受けることができます。

これは多額の資金を投入して参戦してきたメーカーが、苦戦状態をマイナスプロモーションと捉え、すぐに撤退してしまわないようにするものとも言えます。冬の間のテストで充分な走り込みもできないまま登録期限を迎えたホンダにとっては、これが許可されれば戦闘力を向上できるターニングポイントになるでしょう。

開発に成功し、序盤3戦をうまく進めたチームにとっては、いくらFIAが定めているルールとはいえ、自分たちの立場が脅かされる状況にもなりかねませんから、当然受け入れ難いものです。最近はライバルチームの首脳陣からADUOに対するコメントがメディアを通じて伝えられるようになってきましたら、ADUOの採用を警戒しています。

「アストンマーティン」の場合はパワーユニットの性能向上だけでなく、車体の開発も急務です。サイドポッドの形状などに奇抜な空力デザインを採用するアストンマーティンAMR26は、似たような形のマシンが多いF1マシンの中で異彩を放っています。エイドリアン・ニューウェイらしいアプローチではあるのですが、車体とパワーユニットを「アストンマーティン」と「ホンダ」が協力し合ってアップデートしていく必要があります。

まだ数戦かかると思いますが、とにかく懸命な作業が功を奏し、アロンソとストロールが闘える状態になることを祈りましょう。

©Getty Images