バラバラだったピースがいよいよ揃いはじめてきた。
『ラムネモンキー』第6話は、“マチルダ”こと宮下未散(木竜麻生)をめぐる謎のヒントがついに明かされた。いい先生だったはずのマチルダはなぜ突然姿を消したのか。そこには、思い出の故郷・丹辺に隠された深い闇がありそうで……。
誰も知らなかったランボーの優しい正体
今回、クローズアップされたのは、“ユン”こと吉井雄太(反町隆史)、“チェン”こと藤巻肇(大森南朋)、“キンポー”こと菊原紀介(津田健次郎)の3人が、少年時代にランボーと呼んでいた二瓶清吉(野仲イサオ)の半生だ。
寡黙なコワモテは、子どもの目から見れば不気味なおっさん。しかし、実の妹が語る素顔は、優しくて明るい自慢の兄。人気者だったランボーを変えたのは、戦争だった。戦地で過酷な体験をしたランボーは、復員後、別人のように人格が変わり、他人を遠ざけるようになったという。そんなランボーが心を許した数少ない相手が、同じ引き揚げ船で日本に帰ってきた戦友であり、マチルダはその戦友の一人娘だった。
ランボーがマチルダと同じアパートに住んでいたのも、マチルダの周辺にランボーの姿がたびたび見かけられたのも、マチルダのストーカーだったからじゃない。亡き友の忘れ形見を見守っていたのだ。戦争によって人が変わってしまったかのように見えたランボーだが、根っこは何も変わってない。優しくて明るい少年時代の清吉そのままだった。
だが、ランボーは何者かに襲われて大怪我を負い、丹辺の街を去った。そして、ランボーを襲った犯人が、竿竹屋の鳥飼久雄(村上航)だった――というのが、第6話の全貌。ここから見えてくるマチルダ失踪の真相を考察したい。
すべての発端は、街の再開発にある?
まずこの6話で最も注目すべきポイントは、キンポーが料理中に思い出した火災風景だろう。火事で思い出すのは、第3話で明かされた、映画研究部に頭数合わせで入れられた4人目の部員。その子の家は火事で焼けたとユンが思い出していた。キンポーが思い出した火の手は、その4人目の部員の家が焼けたときのものだと見ていいだろう。なぜ火事が発生したのか。おそらくいずれ登場するであろう4人目の部員が事件の鍵を握っている。ユン、チェン、キンポーに続くネーミングも含めて注目だ。
マチルダとチェンの両親、そしてユンの父親に接点があった事実も忘れてはいけない。親たちの関係性について改めて整理すると、もともと再開発をめぐってチェンとキンポーの親は反対運動をしていた。一方、市役所勤務のユンの父親は再開発を推進する立場だった。対立関係にあったはずが、第3話でチェンの家をユンの父親が訪ね、仲良く酒盛りをしているシーンが描かれている。ビデオカメラを購入するなど急に羽振りが良くなった点から考えて、商店街の会長だったチェンの父親がユンの父親に金で丸め込まれたと見るのが妥当だろう。
つまり、丹辺をめぐる再開発には、きな臭いお金の動きがあった。もしランボーがそれを知り、告発する動きをとっていたとしたら……。ユンの父親が鳥飼を金で雇い、ランボーを襲うように仕向けたという線も十分にあり得る。ただ、ランボーが怪我を負ったのがユンの父親の計略なら、病院に駆けつけたユンの父親の神妙なリアクションはやや真に迫りすぎている気もする。はたしてユンの父親は白か黒か。この事件の真相を知るとき、ユンは知りたくない真実を知る可能性もある。
ちなみにチェンの両親はすでに他界。ユンの父親も去年亡くなっているとすでに明かされている。となると、死人に口なし。これらの真実はすでに墓の下に眠っていることになる。唯一手がかりがあるとすれば、まだ存命のキンポーの母・祥子(高橋惠子)。認知症を患う彼女の記憶が、思わぬ扉を開く鍵になるのかもしれない。
注目は、黒江の婆さんの隣にいる少女
また、ここまでのエピソードは第1話で描かれた上映会にやってきた丹辺の住民たちが関連している。この中でまだ大きくフィーチャーされていないのが、トレンディさん(三浦獠太)、チンピラの八郎(佐久本宝)、そして黒江の婆さん(前田美波里)だ。あらすじを読むと、次回はどうやらトレンディさん回になるらしい。ここでまた何か一つ重要なヒントが明かされるとして、残るは八郎と黒江の婆さんだ。
八郎については、交通事故で亡くなっていると第4話でチェンが話していた。この事故死というのも何やら怪しい。また、黒江の婆さんが暴れていたという事件にも、ユンの父親がいた。やりとりから想像するに、再開発をめぐって市役所勤務のユンの父親が黒江の婆さんのもとへ交渉に来たが、逆鱗にふれ、追い返されたというところか。
見逃せないのが黒江の婆さんの隣にいる少女だ。第1話で彼女のことをユンは「黒江さん」と呼んでいた。つまり、ユンと少女は顔見知りということになる。この少女こそが、不登校児である4人目の部員なのではないだろうか。
ということは、燃えたのは黒江の婆さんの邸宅となる。そして、そうなってくると、火事は立ち退きで揉めたユンの父親が仕組んだという説も出てくる。また、ユンの父親とチェンの父親がつながっているのであれば、なくなったビデオテープを隠したのはチェンの父親である可能性が高い。
ただ、これらの点と点がどう線になってマチルダにつながるかはいまだ不明のまま。臨時教員としてやってきたマチルダが、街の再開発に巻き込まれることになるとは考えにくく、どういういきさつでユンの父親たちと関わるようになったのかが見えてこない。マチルダの家に入った空き巣の目的も謎だ。犯人は、マチルダの家から何を盗みたかったのだろうか。もしやビデオテープはマチルダが持っていて、それを狙ったのか。
第1話でマチルダのペンを掘り当てたときにユンがつぶやいた「俺たちのせいだ」という言葉の真意も、謎のベールに包まれたまま。その前シーンで、何者かによってコートを切りつけられたマチルダ、年越しの神社でサーチライトのような光を見上げるユンたち、マチルダのビラを配るユンたち、そして何かを探すように沼を漁るユンたちがフラッシュバックしている。
「俺たちのせいだ」とは、どういう意味なのか。少年時代のユンたちが何かを見落としてしまったがために、マチルダは悲劇に巻き込まれたのか。いよいよ物語は核心へと近づこうとしている。
ただ、本作が「一生懸命頑張っている名もなき人のための物語」であるならば、再開発に潜む巨悪を暴くといった日曜劇場的な大仕掛けは本筋ではない気がする。なので、マチルダの失踪は再開発とは一切関係ないという説を個人的には推したい。
古沢良太の出世作『キサラギ』も、亡くなったB級アイドルの死の真相をめぐり、オタクたちの推理は二転三転するが、最終的にはとても温かな結論に至った。この『ラムネモンキー』もまた勧善懲悪の英雄譚ではなく、人生のささやかな幸せを噛みしめるような優しいラストが待っている気がする。
(文・横川良明)
ドラマ『ラムネモンキー』第7話あらすじ
鶴見巡査(濱尾ノリタカ)の調べによると、鳥飼は地元の暴力団・白狼会の構成員だったらしい。そこで、チェンたちは鳥飼がどんな人間だったかを探るべく、かつて暴力団員だった男たちが営む整体院を訪問。そこで、鳥飼が竿竹屋を営みながら、裏では金さえもらえればどんな依頼も引き受ける闇の人間だったという証言を得る。しかし、鳥飼は報復に遭って、すでに死亡していた。
マチルダはヤクザと何かしらのトラブルを抱えていたのか。3人は、マチルダが失踪する直前――1988年のクリスマスを振り返る。部室にこもって編集作業に明け暮れていたユンたち。そこにやってきたのは、トレンディさんで……。
『リーガル・ハイ』『デート〜恋とはどんなものかしら〜』『コンフィデンスマンJP』など、心沸き立つ傑作ドラマを生んできた古沢良太。業界屈指のビッグネームが、民放の連ドラでは実に8年ぶりとなる新作を書き下ろした。それが、『ラムネモンキー』だ。 […]
| タイトル | 『ラムネモンキー』 |
| 放送日時 | 毎週水曜22時からフジテレビ系で放送 FODでは地上波放送後に次回放送分をプレミアム先行配信 |
|---|---|
| スタッフ | 原作:古沢良太『ラムネモンキー1988』(note刊) プロデュース:成河広明(フジテレビ) プロデューサー:栗原彩乃(フジテレビ)、古郡真也(FILM) 演出:森脇智延 |
| キャスト | 反町隆史/大森南朋/津田健次郎/木竜麻生/福本莉子/濱尾ノリタカ/大角英夫/青木奏/内田煌音 ほか |
| URL | https://www.fujitv.co.jp/ramunemonkey88/(公式サイト) https://fod.fujitv.co.jp/title/80xj(FOD配信ページ) |
(C)フジテレビ
