思わず「やられたー!」と唸った人も多かったのではないだろうか。事件の鍵を握る「No.12」のテープ。その行方をめぐって様々な考察が繰り広げられていたが、答えは膝を打つほど鮮やかだった。
ついにラストスパートに入った『ラムネモンキー』。本作は、ヒットメーカー・古沢良太の新たなる名作として記憶に刻まれることになりそうだ。
ミステリーの鉄則を体現した古沢良太の見事なアイデア
昨今のドラマ界を賑わせる考察ミステリー。だが、風呂敷を広げるだけ広げてうまく畳めていなかったり、種明かしがどうにもこじつけだったり、何度もリピート再生しなければわからないような画面の隅にヒントがねじ込まれていたりして、謎解きの点で満足させてくれる作品というのは、あまり多くない。
本来、ヒントは視聴者にはっきりと見える形で、後出しではなく、序盤から提示されていることがミステリーの鉄則. あまりにも堂々と提示されているせいで逆に見落としてしまい、作者に気持ちよく騙されることが、ミステリーの快感なんだと思う。
その点、今回の『ラムネモンキー』は見事だった。テープのありかを示すヒント。それは、部室のプレートの裏に書かれた“マチルダ”こと宮下未散(木竜麻生)のイラストだった。手描きの絵に添えられた「上を向いてガンバレ」というメッセージは、突然いなくなったマチルダから、“ユン”こと吉井雄太(反町隆史)、“チェン”こと藤巻肇(大森南朋)、“キンポー”こと菊原紀介(津田健次郎)の3人に宛てたエールだと思っていた。けれど違った。
「上を向いて」は文字通り、部室の天井裏を示していた。出てきたのは、カビだらけの「No.12」のテープ。こんなにも近くにずっと真実への鍵が隠されていたのだった。ストレートすぎて、逆に気づかない。まさに人の盲点をついたトリックだ。この古沢良太のアイデアには、大人しく拍手を送るしかない。黒江の婆さん(前田美波里)から恵子(瑞島穂華)へ。そして恵子からマチルダへと渡ったこのテープに何が映されているのか。気になりすぎて次回が待ちきれない!
大物政治家・加賀見は、チンピラ・八郎の兄弟……?
黒江の婆さんの死の原因が、再開発をめぐるトラブルにあったというのは、大方の予想通り。そこに、ユンたちの親が絡んでいるのも、ほぼ確定的だ。今回気になったのは、ユンの父親は50歳で市役所を辞めたという事実。状況的に見て、一連 of 再開発に絡んでいると考えて間違いないだろう。何かしらのペナルティを負わされる形で市役所を追いやられたのか。あるいは、罪の呵責に耐えきれず市役所を去ったのか。これから明らかになる父の真実が、贈賄事件に直面するユンの決断に影響を及ぼすことになりそうだ。
また、何かと怪しい兄・健人(松村雄基)が、1988年に起きた丹辺の再開発に一枚噛んでいる説もかなり濃厚になってきた。とはいえ、当時はまだ学生であろう健人がどんなふうに関わっているのかは謎。ラストで絵美(野波麻帆)のコートの背中が切りつけられていたが、あれはかつてマチルダがやられたのと同じ手口。つまり、同じ人物が嫌がらせをしていると考えられる。1988年に出てくる登場人物で、現代も存命しているキャラクターは意外に少ない。加えて、ユンが事件の核心に迫りつつあることを知っている人物となると、ますます限られている。
つまり、脅迫の犯人は健人と考えるのが妥当だろう。健人はもともと新聞記者志望だったという。健人が夢をあきらめたのも、再開発に揺れる丹辺での出来事が原因だと考えられる。罪を犯した自分は、正義のジャーナリストにはなれないと絶望したのか。あるいは、再開発の背後にある闇を知り、人間というものに失望したのか。健人は、物語のラストを担う重要人物だ。
同じく何らかのヒントを握っていそうなのが、祥子(高橋惠子)だ。死人に口なしとばかりに、再開発に関わったほとんどの人物はすでにこの世にいない。祥子は、数少ない生き証人だ。認知症というのも、真実を隠すためのデコレーションに思えてならない。彼女が過去を語るときこそが、再開発に翻弄された丹辺の真実を知るときだ。
個人的に最も気になっているのが、八郎(佐久本宝)だ。消えたマチルダの行方を探す中学時代のユンたちに、すでにマチルダは殺されているとほのめかした八郎。あれが単なるチンピラの因縁ではなく、何らかの確信を持った上での発言だとしたら、八郎は再開発の裏でうごめく大人たちの黒い関係を知っていたということになる。
ここまで登場してきた中で、まだ素性が明らかになっていない人物として、加賀見六郎(高田純次)がいる。今さらだけど、この六郎という名、ちょっと八郎に似すぎではないだろうか。ここで八郎と加賀見、実は兄弟説をぶち上げたい。つまり、加賀見もまた丹辺の再開発における関係者であるということ。健人とは当時から癒着関係にあり、この再開発を皮切りに二人はのし上がってきた。八郎は交通事故で亡くなったと言われているが、もし加賀見と兄弟だとしたら、その死もますます口封じ的な色合いが濃くなる。
少なくともここまでの構成から考えて、古沢良太は不必要なピースをばらまくタイプの作家ではない。すべての登場人物、すべての台詞に何かしらの意味があると期待していい。あらゆるピースが綺麗に埋まったとき、マチルダ失踪事件の真相が浮かび上がってくるはずだ。
(文・横川良明)
ドラマ『ラムネモンキー』第9話あらすじ
娘・綾(三浦舞華)の隠し撮り写真に、切りつけられた絵美のコート。それらは、これ以上事件を暴き立てるなという犯人からの警告のようだった。脅迫には屈しないと言うユンに、家族の安全のため、しばらくマチルダの事件には関わらないよう、チェンは諭す。ユンの分まで真相究明に乗り出そうとするチェンたちだが、これまで文句を言いながらも協力をしてくれた鶴見巡査(濱尾ノリタカ)の態度が一転してトーンタウンしていた。不審に思ったチェンは、これ以上事件を調べるなと上からの圧力がかかっているのではないかと疑念をぶつける。明るい未来の象徴に見えた再開発。でも決してそこに明るい未来などなかった。マチルダがテープと一緒に残した「Don’t trust Clark」というメモの意味を解き明すべく、ユンたちは修復された「No.12」のテープを再生するが……。
古沢良太脚本の話題作『ラムネモンキー』。1988年と現代が交錯し、失われた記憶を掘り起こす「青春回収ミステリー」。FOD INFOでは、そんな『ラムネモンキー』の世界をさらに深く楽しむためのネタバレレビューを連載中です。 この記事では[…]
地上波放送後に次回放送分をプレミアム先行配信!
| タイトル | 『ラムネモンキー』 |
| 放送日時 | 毎週水曜22時からフジテレビ系で放送 FODでは地上波放送後に次回放送分をプレミアム先行配信 |
|---|---|
| スタッフ | 原作:古沢良太『ラムネモンキー1988』(note刊) プロデュース:成河広明(フジテレビ) プロデューサー:栗原彩乃(フジテレビ)、古郡真也(FILM) 演出:森脇智延 |
| キャスト | 反町隆史/大森南朋/津田健次郎/木竜麻生/福本莉子/濱尾ノリタカ/大角英夫/青木奏/内田煌音 ほか |
| URL | https://www.fujitv.co.jp/ramunemonkey88/(公式サイト) https://fod.fujitv.co.jp/title/80xj(FOD配信ページ) |
(C)フジテレビ
