ついに犯人が現れた。
「俺がやった」
“アホの八郎”こと多胡秀明(梶原善)の告白。“マチルダ”こと宮下未散(木竜麻生)は本当に八郎に殺されてしまったのか。37年の時を経たミステリーは、今、やるせない慟哭に打ち震えている。
再開発の裏で暗躍していたのは、若き日の加賀見だった
映研の部室の天井裏から発見された「No.12」のテープ。そこには、「Don’t trust Clark」という走り書きのメモが添えられていた。書いたのは、おそらくマチルダ。マチルダは “ユン”こと吉井雄太(反町隆史)、“チェン”こと藤巻肇(大森南朋)、“キンポー”こと菊原紀介(津田健次郎)の3人に何を伝えたくて、この警告のようなメモを残したのか。クラークの正体が第9話のキーだった。
そして、その答えもまた「No.12」のテープの中に隠されていた。テープに上書きされた、大地主である黒江の婆さん(前田美波里)がデベロッパーから土地の売却を懇願されている映像。そこにいたのは、若き日の加賀見六郎(高田純次/1988年時は荒井志郎)だった。さらにユンの兄・健人(松村雄基/1988年時は藤枝喜輝)をクラークと呼んでいる姿が残されていた。
正義感が厚く新聞記者志望だった健人を、なぜマチルダは信用するなと言ったのか。恵子(瑞島穂華)から預かったテープの中身を知ったマチルダは、黒江邸の火災は再開発側による放火だったと勘付く。そして、それを健人に相談した。しかし、すでに健人は加賀見らに懐柔されていた。だから、マチルダは「Don’t trust Clark」というメモを残したのだった。
健人が何らかの不正に加担していたことまでは事実なんだろう。だが、案外そこまで悪いやつでもないのかもしれないという考察の余地も残された。健人は、絵美(野波麻帆)と綾(三浦舞華)を脅したのは自分ではないと主張し、ユンたちを見張っていたのも彼らに一線を越えさせないためだと説明した。おそらくこの言葉に嘘はないんだと思う。健人もまた欲望に飲まれたが、魂までを売り渡したわけではなかった。彼にも彼なりの正義がある。ならば真の黒幕は、加賀見ということだろうか。いよいよ次回は、加賀見との全面対決となりそうだ。
子どもじみた「空想」を現実に変えるときが来た
ただ、一縷の望みを託していたマチルダ生存説はどうやらかなり厳しいことはわかってきた。やはりマチルダはもうこの世にはいないのだろうか。だとすると、あまりにも辛すぎる。
結局、丹辺の再開発において、欲に流され、体制についた側は甘い汁を吸い、その後の人生を謳歌した。一方、黒江の婆さん然り、マチルダ然り、自分の信念を貫き通した者たちは非業の死を遂げたことになる。結局この世は正しいことをした人が報われない世界なのだろうか。
健人が寝返った気持ちもわからなくはない。彼はきっと絶望したのだろう、強大な権力の前ではちっぽけな正義感など無力に等しいと。だから、虎の尾を踏まないように上手に立ち回って生きてきた。ユンへの忠告も、弟を思う兄の気持ちから来るものだということはよくわかる。
でも、だからこそ切ない。大人になるということは、そうやって利害を考え、信念と保身を天秤にかけながら生きていくことなのだろうか。きっとユンたちは、そうじゃないということを証明するために、ここから加賀見に立ち向かっていくんだと思う。
大人たちが「空想」と笑ったものを、子どもだった僕たちは本気で信じていた。21世紀になったら車が空を飛ぶと信じていたし、正義のヒーローはいると信じていたし、夢は叶うと信じていた。大人になるということは、信じる心を失うことじゃない。
これまでユンたちが思い出してきた過去は、どれもこれも子どもじみた空想によって塗り替えられていた。ならば今度はそのでたらめな空想で未来を塗り替えよう。悪は必ず暴かれる。正義はいつかきっと報われる。そんな世界を、空想ではなく、現実にしよう。ユンたちが映研時代に撮っていた映画も、悪いやつらを倒す話だった。子どもの頃に思い描いた筋書きを大人になって実現する。『ラムネモンキー』は、そんな物語なんだと思う。
残す大きな謎は、「約束守りなさいよ」というマチルダの言葉。ユンたちがマチルダと交わした約束は何だったのか。そしてもう一つは、大晦日の日にユンたちが見上げたサーチライト。あの光のもとには誰がいたのか。
すべての真相を解明することができたら、たとえマチルダがもうこの世にいなかったとしても、いいおじさんになった元教え子たちを「よくやったじゃん」と褒めてくれるような気がしている。
(文・横川良明)
ドラマ『ラムネモンキー』第9話あらすじ
マチルダを殺害するように指示をしたのは加賀見六郎ではないか。ユンたちは多胡にそう問いつめるが、真相を漏らしたら自分が消されると口を割らない。意を決したユンたちは直接加賀見の屋敷を訪ねる。しかし、ユンたちの詰問に対し、加賀見は悠然とした構えを崩さない。加賀見の口から語られる、再開発の真相。街の未来のために、誰かが悪事に手を染めなければいけなかったと加賀見は詭弁を弄する。そして、何度もテープを渡すように説得してきたが、期限の日にマチルダが持ってきたのは「別の馬鹿げたテープだった」と健人は明かし……。
古沢良太脚本の話題作『ラムネモンキー』。1988年と現代が交錯し、失われた記憶を掘り起こす「青春回収ミステリー」。FOD INFOでは、そんな『ラムネモンキー』の世界をさらに深く楽しむためのネタバレレビューを連載中です。 この記事では[…]
地上波放送後に次回放送分をプレミアム先行配信!
| タイトル | 『ラムネモンキー』 |
| 放送日時 | 毎週水曜22時からフジテレビ系で放送 FODでは地上波放送後に次回放送分をプレミアム先行配信 |
|---|---|
| スタッフ | 原作:古沢良太『ラムネモンキー1988』(note刊) プロデュース:成河広明(フジテレビ) プロデューサー:栗原彩乃(フジテレビ)、古郡真也(FILM) 演出:森脇智延 |
| キャスト | 反町隆史/大森南朋/津田健次郎/木竜麻生/福本莉子/濱尾ノリタカ/大角英夫/青木奏/内田煌音 ほか |
| URL | https://www.fujitv.co.jp/ramunemonkey88/(公式サイト) https://fod.fujitv.co.jp/title/80xj(FOD配信ページ) |
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