国民の政治不信の根底にある「政治とカネ」問題。『ポリティカルパン』第4話はついにここに真っ向から斬り込んできた。政党交付金から企業献金。国民の知らないところで蠢く不透明なカネの流れに、如月弥生(石原さとみ)は何を思うのか。
政治家に必要なのは、約束を守ることだ
「企業・団体献金を禁止すべきですか?」
選挙の前に政党マッチングサービスを利用すると、必ず出てくるこの質問。自民党派閥の政治資金問題を受けて政治資金規正法が改正されたのは、2024年のこと。「政治とカネ」に関する不信感は根強く残る一方、企業・団体献金自体はいまだ禁止されていない。
個人的には、企業献金と聞いてポジティブなイメージは一切ない。ほとんど癒着と同意義くらいに思っている。それでも禁止されないのは、政治活動には資金が必要であり、その原資になっているからだと理解していた。
が、本当に不勉強でお恥ずかしい限りですが、政党交付金というものの成り立ちを全然知らなかった。日本では、企業や団体からの献金を禁止する名目で、その助成制度として政党交付金が誕生した。にもかかわらず、それから30年経った今も、政党への献金は禁止されていない。え? なんなの? 嘘つきなの? てか、むしろ取り分が倍増してんじゃん! こっわ!!
と、ここまでが日本の話。そしてどうやらニッポニアも同じような状況らしい。いやあ、奇遇ですね。
ニッポニアでは、選挙で勝つために地方議員にカネをバラまく。資金力こそ、政治家の力なのだ。カネがなければ、権力を持てない。だから、企業からカネを集める。ぐるぐる回るカネの流れは、あくまで自分たちの利益と保身のため。国民の生活を良くするために、カネは動かない。
「そりゃあ、30年前の約束なんて忘れられるわけだ」
失望したように弥生は吐き捨てた。この台詞が、今回のフックだ。
そもそも政治とは、約束なんだと思う。自分が政治家になったら、国民のためにこんな社会を実現する。掲げた約束を信じ、有権者は自分たちの代表を選ぶ。なのに、いつまで経ってもその約束は果たされない。そして、国民の失望はより濃くなる。
その繰り返しにもうすっかり慣れっこになってしまっていたからこそ、小早川雅(河合優実)のスピーチはなんだか久しぶりに浴びた太陽みたいだった。
停電から復旧した後、夏目将門(高橋一生)にいつからここにいたのかと聞かれた弥生は「ずっと。真っ暗で怖かった〜」と大仰にうそぶいた。もちろんこれは弥生の素性を訝しむ夏目への牽制なのだけど、それだけじゃない気がした。
ずっとこの国の政治は“真っ暗”だった。永谷町で行われていることは暗幕に覆われ、国民の目に届かない。黒い野心と策略が出し抜き合い、ダークマネーがどんどん膨れ上がる。希望など、どこにも見えなかった。あの停電は、ニッポニアの現状だ。
そして、明るくなったパーティー会場で、雅は「私は30年前の約束を果たします」と誓った。その姿は、この国の夜明けみたいだった。希望の朝だった。弥生が政治家と泥棒は似ていると指摘し、どちらも闇の中で暗躍するものと印象づけてきたからこそ、純粋すぎるくらい正直で、光の照らす道を行く雅が眩しく思えたのだ。
「250円」をフックにした野木亜紀子の鮮やかな劇作術
この第4話は、脚本・野木亜紀子のセンスが炸裂した回だった。政党交付金のための国民一人あたりの年間負担額は、250円。この250円を切り口に、野木は二つのイメージを広げた。
一つが、冒頭でドルチェーノを買うために雅が弥生から借りた250円。そしてもう一つが、幼い日の弥生が空き缶を回収した報酬としてもらった250円だ。夏の暑さにも冬の寒さにも負けずに、空き缶を袋いっぱいに拾い集めたあの頃。施設で育った弥生は250円を稼ぐことがどれほど大変か、身にしみて理解していた。だから、たかが250円と軽んじる永谷町の狸たちが許せなかった。
そんな弥生から借りた250円を雅が返すことで、この物語は一つの到達点へと昇華した。“約束を守る”ということだ。たぶんドルチェーノを買った直後の雅は、後で返すと言いながらも250円くらいどうってことないと思っていたのだろう。それが、そのときの雅の250円に対する重みの精一杯だった。
でも「そりゃあ、30年前の約束なんて忘れられるわけだ」という弥生の言葉を聞いて、たかが250円も30年経てば1兆円になると気づいた。250円の重みを知った。そして、弥生に250円を返したことで、雅は約束を守る人間なのだと証明された。ちょっと影響を受けやすいところがあるし、人を信じすぎるきらいがあるけれど、それでも雅は“約束を守る”という政治家にとって絶対に必要な資質を持った人なのだ。
雅は個人から献金を募り、明細を公開することで、「政治とカネ」の透明化を図ろうと決める。ブラックボックス化している政界を、雅はどれくらい変えられるだろうか。
きっとこれは雅だけの戦いではない。雅のやろうとしていることを実現するには、志を同じくする政治家の力が必要だ。でも、もっと必要なものがある。国民だ。宇都宮みさき(美村里江)は、個人献金が成立しにくい理由として「個人個人の政治参加意識も低い」ことを挙げた。これはニッポニアだけじゃなく、日本もそうだ。
僕を含めた国民の多くが、これだけ生活が苦しくてもなお政治に関心を持たず、個人が何をしたところで社会は変わらないと無力なふりを決め込んでいる。どうすればもっと人が政治に関心を払い、当事者の一人として政治に意見を持てるのか。その一つのきっかけとして、『ポリティカルパン』のようなエンターテインメントの力があるのだろう。
(文・横川良明)
『ポリティカルパン』第5話 あらすじ
乾(渡部篤郎)の計略によって、内閣総理大臣・風祭大治(岩松了)が絡んだセミナーへの入金の一部を盗むことに成功した。その際に使用された口座は、「二十一世紀国家研究会」。亡くなった小早川士郎(草刈正雄)の父の政治団体だった。このことを風祭に指摘された士郎は態度を一変。夏目にも、選挙資金を盗んだ犯人はもう探さなくていいと命じる。
一方、弥生もまた「二十一世紀国家研究会」が士郎の父の政治団体であること、そして25年前に解散していたことを突き止める。また、乾がアジトとして使用しているビルのオーナーになったのも、同じく25年前。前オーナーは、片桐元。それは、乾が所持している懐中時計に刻印された名前だった。はたしてこの相似点が意味するものは何か。弥生は、乾に直接問いつめるが……。
『ポリティカルパン』放送・配信概要
| タイトル | 『ポリティカルパン』 |
| 放送日時 | 毎週水曜22時からフジテレビ系で放送 FODでは地上波放送後に次回放送分をプレミアム先行配信 |
| 脚本 | 野木亜紀子 |
| プロデュース | 北野拓 |
| 演出 | 髙野舞、谷村政樹、及川拓郎 |
| キャスト | 石原さとみ、高橋一生、河合優実、寛一郎、川西拓実(JO1)/ 酒向芳、間宮啓行、岩松了、古舘寛治、草刈正雄、渡部篤郎 |
| URL | https://www.fujitv.co.jp/politicalupin/(ドラマ公式サイト) https://fod.fujitv.co.jp/title/01bl/(配信ページ) |
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